格闘技の試合中、選手が相手を挑発する行為はそこまで珍しくありませんが、今回はそんな中でも挑発したはいいものの、その後盛大に相手にボコられた試合を紹介します。
【格闘技】舐めプしたらボコられた試合
フロイド・メイウェザーVSリッキー・ハットン
2007年に行われたこの試合は、38戦全勝のメイウェザーと43戦全勝ハットンの無敗同士の対決でした。
イギリスの英雄であるハットンとPFP(パウンドフォーパウンド)の呼び声の高いメイウェザー、米英対決の注目のビッグマッチで、1万6000席のチケットは発売からわずか1時間で完売し、前日軽量にはなんと5000人ものファンが集まりました。
互いに一歩も引かずやり合う姿に会場も大盛りあがりです。試合会場はハットンのアウェイであるラスベガスでしたが、ハットンを応援する歓声が圧倒的なほど、ハットンのファンの量と熱がある状況でした。
試合が始まると、ハットンの突進をメイウェザーがいなしていく展開になります。
問題のシーンは6Rに訪れます。(6R1:00)ハットンがクリンチからメイウェザーをロープの外に出し、後頭部に追撃を加えます。
メイウェザーは上半身がロープの外に出て、お尻をリングに突き出している状態でした。
ハットンが後頭部へのパンチで反則の減点を取られ、試合が再開されますが、ハットンは悪びれる様子なく、メイウェザーに向かってお尻を突き出しました。
先程のメイウェザーの状態を真似したハットンの挑発。これにはメイウェザーも苦笑いです。
ボクシングにおいて背中を向けるという行為は、戦闘意思がないとみなされ、よくない行為ではあります。ハットンとしてはメイウェザーにも否があるとアピールしたかったのかもしれません。
試合終盤になると、体力の消耗を見せてきたハットンに対してメイウェザーが攻勢に転じます。
細かいカウンターや下がりながらのビッグパンチを狙い、ハットンをスクールしていきます。
そして10R、メイウェザーのハイライトの中でも有名なシーンが訪れます。
メイウェザーは左フックを打ちながらの突進してきたハットンに対して、身体を捻りながら左フックをジャストミートさせます。
メイウェザーの左拳がヒットした後、ハットンの顔は上を向き、飛び込んできたままの勢いでコーナポストに衝突。
キャンバンスに倒れ込みました。
イギリスの英雄の衝撃的な光景に場内は騒然となります。
なんとか立ち上がるものの、メイウェザーがラッシュをかけぐらつくとレフェリーがストップ。ハットンはダウンし、タオル投入となりました。
ヨハネ・セガVSジョー・ハーディング
2017年2月18日に行われたこの試合は、舐めプしてボコられた試合としてはかなり有名かもしれません。
試合開始後、相手のパンチを見切りカウンターを当てたハーディングは、この試合は余裕だと思ったのか、試合中によそ見をしたり、ノーガードで相手の前に顔を近づけたりと序盤から挑発を繰り返します。
よそ見をした後に飛び蹴りをしたり、よそ見をしながら腰を振ったりなど、終始挑発を続けました。
1R終了時には、レフェリーから注意を受けているようなシーンも見られます。
しかし、その後もハーディングは挑発を続け、衝撃の瞬間が2Rで訪れます。
ハーディングがヨハネの前で横を向きタコ踊りを始めたのです。それにヨハネがすかさず左ハイキックを決め、ハーディングは失神。
ヨハネが追撃のパウンドをお見舞いすると、レフェリーは急いで試合を止めました。大喜びするヨハネと全く動かないハーディング。
ハーディングは意識朦朧のままケージを立ち去りました。
完全に相手を舐めきってからの失神KO負け。ハーディングにとっては戦績以上に”イタイ”試合だったでしょう。
井上尚弥VSワーリト・パレナス、ジェイミー・マクドネル
井上選手からは2試合まとめて紹介します。
ワーリト・パレナス戦
2015年12月29日に行われたパレナス戦では、パレナスは試合開始早々、井上選手のコンビネーションをガードの上から受けますが、首を振りながらニヤリと笑います。
その後も、「こんなものか」というような動作で井上選手のパンチに首をかしげます。
そして、三度(みたび)井上選手がガードの上から打ち込むと、さらに首をかしげます。これには井上選手もニヤリと笑い返します。
この時、もしかしたらパレナスは、押してはいけないスイッチを押したのかもしれません。
その後も、「大したことない」アピールをするパレナス。
パレナスのパンチをかわし、ジャブやカウンター、コンビネーションを当てていく井上選手。徐々にパレナスの余裕がなくなっていきます。
そして、2R(0:27)井上選手が離れ際に飛び込んでの右フックをヒットさせます。
ふらつき後退するパレナスに、井上選手がラッシュをかけます。
ガードの上から強打を叩きつける井上選手、パレナスがぐらつくとさらにガードの上から強打を振り回しダウンを奪います。
ライトフライ級の試合でガードの上から選手が吹き飛ばされる、という異様な光景です。
なんとか立ち上がるパレナスですが、井上選手がすぐにラッシュをかけダウン。悔しそうにキャンバスを叩くパレナスですが、レフェリーは試合を止めTKO負けとなりました。
試合前、「ファンを楽しませる試合になると思うし、たぶんKO決着でしょう」と語っていたパレナスですが、皮肉にもそれは別の意味で実現してしまいました。
試合後、パレナスは
「2Rにダウンしたパンチはスピードが速すぎて見えなかった」
「想像していたよりも強かった」
と語っていました。
ジェイミー・マクドネル
2018年5月25日に行われたこの試合は、試合前からマクドネルの舐めプは始まっていました。
試合前のインタビューでは
「イノウエのファーストネームすらどう発音するかも知らない、俺の方がタフで強い。イージーな相手だ」
と答え、試合前日の計量では1時間以上の遅刻をし、謝る素振りもなかったそうです。
これには井上選手も
「ふざけているなと思います。謝る態度1つなくて王者陣営の態度にイラっとしました。明日はそれをぶつけようと思います。1時間オーバーはないですよ」
と怒りをあらわにし、フェイス・トゥ・フェイスでは眼光鋭く睨みつけ、珍しく熱くなっている様子でした。
試合開始前にはこの表情です。
試合が始まると、いきなり井上選手が豪腕を振り回します。普段は1Rは慎重に様子を見る井上選手ですが、これだけで熱くなっている様子がわかります。
そして、井上選手が左のオーバーハンド気味のフックを上から叩きつけ、マクドネルをぐらつかせた後、ダウンを奪います。
自分よりも10センチ身長の低い相手に、上から叩きつけるようなフックで効かせられたマクドネルは、さぞかし驚いたことでしょう。
試合開始、まだ1分半も経っていない時点での光景です。
マクドネルが立ち上がると、井上選手は怒涛のラッシュで長身をキャンバスに沈めました。割って入るタイミングをうかがいながら、慌てて止めるレフェリーの様子が、このラッシュの勢いを物語っていました。
いつも冷静で隙きを見せない井上選手が、ノーガードで強打を振り回し続けたのです。マクドネルの試合前の挑発は、大きな代償を払うことになりました。
試合後、マクドネルは
「井上選手は本当に強かった。井上はグレート、パンチもあって素晴らしいファイターだ。地球上で1番強いバンタム級の選手と戦えた」
と、語っていました。
青木真也VSデイビッド・ガードナー
2009年3月8日に行われたこの試合は、”ハロージャパン事件”として格闘技史に残る有名な試合となりました。
試合は、終始青木選手が組み付きグラウンドで攻める展開になります。
歴史的なシーンは1R5分30秒に訪れます。
青木選手にバックを取られているガードナー、何を思ったかガードナーは顔を上げた状態で手を振り、「ハロージャパン」と叫んだのです。
総合格闘技ファンならこの状態で、顔を上げ腕をフリーにすることが何を意味するか誰にでもわかるでしょう。
日本きってのグラップラー青木選手がそんな隙きを見逃すはずもなく、すぐにチョークで締め上げるとガードナーはたまらずタップし一本負けとなりました。
この奇っ怪な光景に視聴者や観客はもちろん、青木選手や解説陣もあっけに取られたでしょう。
解説を務めていた須藤元気さんは、チョークが入ったときに「ハロージャパンで取られました!」と嬉しそうに語り、試合が終わった瞬間に「グッバイジャパンですね(笑)」と皮肉を効かせたコメントをしていました。
試合後のガードナーの『こんなはずじゃ・・・』といった表情が、なんとも物悲しく映っていました。
試合後、ガードナーはこの件に関して
「退屈してしまっていたのでお客さんにあいさつを。少しでも試合が楽しくなるようにパフォーマンスをしたのです」
と語っていました。
皮肉にもこの試合はガードナーの思惑通り、ファンの記憶に残る試合となりました。
青木真也VS長島☆自演乙☆雄一郎
2010年12月31日に行われたこの試合は、衝撃的な展開でとても有名な試合です。
総合の選手である青木選手と、キックの選手である雄一郎選手は、1Rはキックルール、2Rは総合ルールで戦うというミックスルールで行われました。
この同じ試合のなかで、ラウンドによってルールが変わるミックスルールは、今でこそ珍しいですが当時はよく行われていました。
互いに得意なラウンドが用意されているとはいえ、1R目が相手の土俵というのは青木選手にとっては不利な状況です。
しかし、青木選手はこのルールで受けて立ったのです。
試合が始まると青木選手が執拗に組み付き、クリンチを繰り返します。
1R中盤になると、ドロップキックや飛び蹴りなどを繰り返し、あからさまな時間稼ぎをし、会場はざわつき始めます。
会場の空気も、レフェリーからの注意もなんのその。
試合前の会見で、「2Rになったら、(雄一郎選手は)五体満足で帰れないと思うんで」と語っていたとおり、青木選手はこの不利なラウンドをギリギリのルール内で逃げ切り、得意な総合ルールの2Rで仕留めるつもりです。
この展開に解説を務めていた魔裟斗さんは「こんな戦い方するならキックルール受けんなって言いたいですね」と怒り心頭でしたが、須藤元気さんは「空気が読めないとこが最高っすね!テンション上がるなあ」とはしゃいでいました。
そして、青木選手は思惑通りそのまま1Rを逃げ切ったのです。魔裟斗さんは「乙選手、パンチでぶっ倒してほしいね」とあからさまに雄一郎選手を応援していました。
そして、青木選手が待ち望んでいた2Rのゴングが鳴ります。
決着は一瞬でした。
2R開始早々、青木選手がタックルに行くと、雄一郎選手が右膝をカウンターで合わせ、青木選手は失神。
雄一郎選手がパウンドを連打すると、レフェリーがすぐに試合を止めました。
露骨な時間稼ぎをしてまで、得意な2Rに持っていった青木選手。しかし、その2Rは自身の失神により一瞬で終わらせてしまいました。
この劇的な展開に会場は大歓声。魔裟斗さんは「偉い!乙!よくやった!」とスタンディングオベーションで雄一郎選手を称えました。
ちなみに、このとき青木選手が脱糞をしたという噂が流れていましたが、本人が直接否定しています。
日本屈指のMMAファイターの青木選手ですが、伝説に残る試合を数多く残しており、愛すべきキャラクターではないでしょうか。
ジェイソン・ソロモンVSアミテシュ・チャウベイ
この試合はソロモンが入場から美女を引き連れ時間をかけたり、ケージのポストにぶら下がったりと自由奔放、自信満々なな振る舞いを見せます。
集中し外を向いているチャウベイに対し、目を見開いて覗き込む挑発をするなど、かなり相手を舐めている様子が伺えます。
しかし、数秒後にはその余裕はとんでもないしっぺ返しを受けます。
試合開始直後、不用意に右ストレートを放ったソロモンを待ち構えていたのは、チャウベイの強烈なカウンターでした。
チャウベイの右がソロモンの顎をとらえると、ソロモンはダウン。
チャウベイのパウンドにより失神KOとなりました。
入場シーンの盛大なフリから瞬殺という、あまりに見事な流れでした。
堀井翼VS金子大輝
2020年6月28日に行われたこの試合は、故意でなければ金的が許されているミャンマーの格闘技ラウェイの現地王者、金子選手と、5冠王である不可思(ふかし)選手と対戦した際に、自らを”股間王”と名乗っていた堀井選手の対戦でした。
試合前、両者向かい合うときに身体を仰け反らせて舌を出す堀井選手。堀井選手は会見などでも笑いを取る選手で、会場でも笑いがもれていました。
試合が始まると、開始早々金子選手がインローを金的に入れてしまい、堀井選手はたまらずうずくまります。
さっきまでのおちゃらけていた表情とは打って変わって、かなり苦しそうです。
回復後、試合再開するも、ラウェイのルールが抜けきれていないのか、立て続けに2発インローを金的に入れてしまい堀井選手悶絶。
1Rに3発も金的を入れてしまという事態に。
顔を歪める堀井選手。このまま続行不能となり堀井選手の反則勝ちとなりました。
この時、四つん這いになり痛みに耐える堀井選手をでしたが、長時間画面に映し出されたパンツの”堀井翼のラッキーパンチチャンネル”の文字が話題になり、このチャンネルの登録者数が急増したそうです。
股間王らしい勝ち方と、長時間画面に映し出されたパンツの”堀井翼のラッキーパンチチャンネル”の文字など、笑いを取ることが好きな堀井選手にとっては、ある意味おいしい試合だったのかもしれません。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
他にも、舐めプしたらボコられた試合があるかと思います。
ぜひ、コメント欄にて皆さんの好きな”舐めプしたらボコられた試合”を教えていただけたら嬉しいです。
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