【格闘技】最高のアッパーKO特集
ロイ・ジョーンズ Jr vs ビニー・パジェンサ
最初に紹介するのは、人間離れした身体能力が生んだ驚きのKOです。
ロイ・ジョーンズ Jr vs. ビニー・パジェンサ、ジョーンズが持つIBF世界スーパーミドル級のベルトをかけたタイトルマッチです。
ロイ・ジョーンズはずば抜けた身体能力と反射神経を生かした、型破りなボクシングスタイルで有名な選手です。
重量級4階級制覇の王者で、歴代でも最強ボクサーの一人とされています。
一方、パジェンサは元2階級制覇王者で、この試合の4年前に交通事故を起こし、首を骨折するなどの瀕死の重傷を負いながらも復活。
ロベルト・デュランに勝利するなど、のちにその復活劇が映画になるほど壮絶なボクシング人生を歩んでいました。
試合が始まると、パジェンサはジョーンズの天才的な距離感とスピードに中々近づけません。
しかし、パジェンサの反応もよくクリーンヒットを当てさせません。
1R終了間際にはジョーンズをロープ際につめ、ゴングが鳴ると激しく言い合います。
パジェンサの動きもよいのですが、やはりジョーンズが一枚上手で、3Rにはカウンターを効かせ、激しいラッシュを仕掛けます。
次第にジョーンズの素早いフットワークとジャブに防戦一方になっていくパジェンサ。
時折、ロープにつめインファイトを仕掛けますが、至近距離のコンパクトなパンチも得意としていたジョーンズを追い込むことはできません。
5R終了時、ジョーンズのジャブによってパジェンサの顔は腫れ上がっています。
そして6R、離れ際にジョーンズが左フックをヒットし、追撃でダウンを奪います。
ふらつきながらもなんとか立ち上がってきたパジェンサに、冷静にカウンターを入れダウンを追加。
しかし、パジェンサは再び立ち上がります。
満身創痍のパジェンサですが、ジョーンズがジャンピングアッパーを入れると、左右のフック、左右のアッパーを立て続けに入れ試合終了。
ジョーンズらしいスキップするようなアッパーを3回も決めてのKO。
最初のジャンピングアッパーですが、ジョーンズはこの踏み込む時と同じモーションでのフックも得意としており、相手としてはどちらが飛んでくるのかわからないでしょう。
ジョーンズの超人的な身体能力が産んだアッパー連打のKOでした。
ジャーモール・チャーロ vs ジュリアン・ウィリアムズ
続いては高速アッパーが決まった試合を紹介します。
ジャーモール・チャーロ vs ジュリアン・ウィリアムズ。
チャーロが持っているIBF世界スーパーウェルター級のベルトをかけたタイトルマッチです。
ジャーモール・チャーロは、双子の弟が世界スーパーウェルター級4団体統一王者のジャーメル・チャーロで、天才的なボクサー兄弟です。
一方ウィリアムズも、後にWBA・IBF世界スーパーウェルター級統一王者になる実力者です。
試合が始まると、互いにクロスカウンターを狙う素早い技術戦になります。
そして2R、チャーロのジャブがカウンターで入りウィリアムズがダウンを喫します。
珍しいジャブでのダウンですが、向かい打つ形のカウンターで顎に決まったので効いてしまったようです。
しかしダメージは浅いようで、その後一進一退の攻防が続きます。
そして迎えた5R、強烈なアッパーが決まります。
ウィリアムズのワンツーの打ち終わりに、チャーロの右アッパーがジャストミート。
ウィリアムズが身体を回転させながら倒れます。
ウィリアムズのワンツーのワンをパリングではじき、ツーをそのままブロックしながらスリッピング、ウィリアムズがスリーのフックを打とうとしているところに、身体を傾けた反動で放ったチャーロの右アッパーが炸裂しました。
左フックを打とうとしていたウィリアムズは、その勢いのまま倒れています。
立ち上がったものの、すぐにチャーロがラッシュをかけ、ウィリアムズ3度目のダウンにレフェリーは試合を終わらせました。
試合を見返すと、アッパーの前のウィリアムズのジャブにチャーロが同じ動きをしているのがわかります。
このアッパーを狙っていたのかもしれませんね。
豪快かつ高速のアッパーが決まった試合でした。
マイク・タイソン vs マイケル・スピンクス
続いては、鉄人が世界を驚愕させたアッパーを紹介します。
マイク・タイソン vs マイケル・スピンクス。
タイソンが持つWBA・WBC・IBF世界ヘビー級のベルトをかけたタイトルマッチです。
タイソンはその名を知らない人はいないのではというほどのレジェンドボクサーで、圧倒的なスピードとパワーで当時の実質的な全団体統一王者でした。
この頃は悪名高きドン・キングによるプロモートを受ける前で、21歳ながら全盛期と言われていた時期です。
一方スピンクスもオリンピック金メダリスト、元WBA・WBC・IBF統一世界ライトヘビー級王者、ラリー・ホームズを破った元IBFヘビー級王者、31戦全勝無敗、と輝かしい実績を引っ提げた挑戦者です。
下馬評ではタイソン有利が多いものの、無敗の強者相手にどんな試合になるのか、多くの期待が寄せられました。
しかし、決着は一瞬でした。
試合が始まると、早々に強打を振るっていくタイソン。
スピンクスはクリンチを駆使しながらアウトボクシングをしようとしますが、長くは続きませんでした。
スピンクスのワンツーにタイソンが右を合わせたのをきっかけに、タイソンの猛攻が始まります。
ロープにつめたスピンクスに、飛び跳ねるようなアッパーをヒットさせ、すぐに右をボディにめり込ませダウンを奪います。
スピンクスは立ち上がるものの、のそりと近づいてきたタイソンがスピンクスのフックに、出会い頭の強烈な右アッパーを決め、後ろ向きにダウン。
大の字になったスピンクスはテンカウントで立てずにKO。
世界が注目する一戦がたった91秒で終わったのです。
この記録はタイソンのタイトルマッチで最速となります。
タイソンはこの試合で約25億円を稼ぎました。
全盛期のタイソンが見せた脅威の一撃でした。
レノックス・ルイス vs ジャスティン・フォーチュン
続いては、右アッパーを得意としていたヘビー級レジェンドボクサーの試合です。
レノックス・ルイス vs ジャスティン・フォーチュン。
この時ルイスは、2試合前にWBCヘビー級王座から陥落した元王者で、後にWBA・WBC・IBF世界ヘビー級統一王者になる偉大なボクサーです。
長身と規格外のリーチを活かしたアップライト・スタイルで、シャープな左ジャブと右ストレートを駆使した遠距離と中間距離での攻防に優れ、ガードを固める相手や至近距離でのアッパーも得意としていました。
リングで対峙する二人ですが、かなりの身長差です。
試合が始まると、踏み込んでパンチを放っていくフォーチュンですが、リーチが長く懐の深いルイスには届きません。
ルイスはジャブでフォーチュンの前進を阻み、華麗なフットワークでアウトボクシングをします。
2Rになるとルイスがカウンターのアッパーをヒットさせていきます。
そして、徐々にフォーチュンを弱らせていくき4R、ルイスの強烈なアッパー三連発が炸裂します。
フォーチュンはロープまでよろめきダウン。
レフェリーは試合を終わらせました。
スローで見てみると、最初のパンチは斜め下からのショベル気味のアッパー。
2発目3発目は、下から天に突き上げるような強烈なアッパーです。
特に3発目はジャストミートして、フォーチュンの顎が跳ね上げられているのがわかります。
ヘビー級の強烈なアッパーのトリプルが炸裂した試合でした。
畑山隆則 vs 崔重七(チェ・ジョンチル)
続いては平成のカリスマボクサーが決めたアッパーを紹介します。
畑山隆則 vs 崔重七(チェ・ジョンチル)、OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王座決定戦です。
畑山選手は当時、全日本スーパーフェザー級新人王を獲り、15戦全勝13KOと乗りに乗っていました。
そしてこの試合でも、その勢いを見せてくれることになります。
試合が始まると、細かいステップとボディワークで距離を測る畑山選手。
しかし開始50秒、ジョンチルがロープ際につめインファイトを仕掛けると、右アッパーからの右フックでダウンを奪います。
手数の多いジョンチルに対して、ニ発で決めたダウン。
狭い距離から正確に決めた見事なコンビネーションです。
立ち上がったジョンチルに猛攻を加える畑山選手ですが、ジョンチルは打ち返します。
パンチを効かせるも中々倒れないジョンチル。
しかし、クリンチの離れ際に畑山選手の右アッパーのダブルがヒット。
ジョンチルの顎が弾かれ、マウスピースが飛びます。
ジョンチルはなんとか立ち上がり、ゴングに救われます。
1Rからこの展開に、観客は大いに湧きます。
2Rが始まると、畑山選手は1R同様にフットワークを主体にボクシングを展開します。
そして、左フック、右アッパーを効かせると、最後に右アッパーを追加。
ジョンチルが崩れ落ちると同時に、レフェリーはTKOを宣告しました。
奪った3つのダウン、すべてが右アッパーが絡んだダウンでした。
畑山選手はのちにこのタイトルを3度防衛、2階級制覇王者になるのでした。
リカルド・ロペス
続いては、プロ・アマを通じて無敗のまま引退したレジェンドボクサーから、2つの美しいアッパーを紹介します。
リカルド・ロペス vs. キティチャイ・ブリーチャ。
ロペスは2階級制覇王者で、ミニマム級においては21連続防衛と長きにわたり支配的な強さを誇っていた選手です。
すきのないファイトスタイルで、ボクシング漫画”はじめの一歩”の”リカルド・マルチネス”のモデルとなっています。
試合が始まると、ロペスはすぐにキティチャイを見切ってしまいます。
細かいステップと懐の深いロペスの構えに、キティチャイのパンチは空を切ります。
そして3R、ロペスのワンツーから左アッパーがキティチャイにクリーンヒット。
ロペスはその小さい身体からは信じられないほど強打者でもあります。
下から突き上げるようなアッパーをくらったキティチャイの身体が跳ね上がっています。
スローで見てみるとしっかりと膝のバネを使っているのがわかります。
そして、アッパーを打ち終わった後もしっかりとコンビネーションが続いています。
ロペスのすごいところは、KOとなるようなパンチをコンビネーションで打てるところです。
ロペスのKOシーンは、よくフィニッシュブローの後もコンビネーションが続いていることが多いです。
続いてはアラ・ビラモア戦でのKOです。
アラ・ビラモア木村のリングネームで日本で戦っていた実力者ですが、ロペスの前では通じませんでした。
8R、ロペスの遠い距離から踏み込んでの左アッパーがビラモアの顎をとらえると、ビラモアはゆっくりと崩れます。
まさかの距離から放たれたロングアッパーにビラモアも驚きだったでしょう。
解説を務めていた浜田剛史さんや実況も、「なんて長いアッパーなんだろう」と驚愕していました。
ビラモアは天井を見つめたまま立ち上がることができませんでした。
スローで見てみると、ビラモアのジャブをヘッドスリップした打ち終わりのカウンターということがわかります。
そして、キティチャイ戦のアッパーと同様に、飛び跳ねるような下半身のバネを活かしたアッパーです。
見ていた人を驚愕させたアッパーでした。
フランシス・ガヌー vs. アリスター・オーフレイム
続いてはフランシス・ガヌー vs. アリスター・オーフレイムの試合。
UFCの2017KOオブ・ザ・イヤーに選ばれた歴史に残るKOです。
ガヌーは2022年までは16勝のうち全てをKOか一本というフィニッシュ率100%の戦績を誇り(当時は11勝1敗)、パンチ力は96馬力を記録し世界記録となっているハードパンチャーです。
一方アリスターは日本のPRIDEやK-1でも活躍していた選手で、当時ランキング3位のガヌーと1位のアリスターの試合でした。
試合が始まると、いきなりビッグパンチを放っていくアリスター。
ヘビー級のパンチが交差します。
そしてケージ際でしばらく組み合い、ブレイク後両者見合う緊張の時間が続きます。
しかし突如、アリスターの左フックの打ち終わりにガヌーの左アッパーが炸裂。
一撃で失神したアリスターにガヌーがパウンドを追加したところでレフェリーストップとなります。
アリスターが身体を傾けたところにガヌーの強烈なアッパーが顎にヒット。
当たった瞬間アリスターの顔が弾けるように大きく揺れているのがわかります。
ガヌーのアッパーが顎にクリーンヒットしたわけですから、倒れないわけがありません。
この一撃はガヌーを一躍有名にしました。
ヘビー級の大迫力のKOでした。
ジャーボンテイ・デービス vs レオ・サンタ・クルス
”小さいタイソン”そう呼ばれている現役のボクサーがいます。
階級の中では小柄ながら、踏み込みの速さ、抜群のハンドスピード、桁違いのパワー、素行の悪さ、見た目などタイソンそっくりです。
彼の名はガーボンタ・デービス。そんなデービスが見せた、ボクシング史に残るアッパーを紹介します。
対戦相手はレオ・サンタ・クルス。対戦時点で、4階級制覇のスーパーフェザー級王者です。
今回の試合は、デービスが持っているライト級と、サンタ・クルスが持っているスーパーフェザー級の階級の違う2つの世界王座が同時に懸けられた極めて異例の試合です。
これに勝てばサンタ・クルスにとっては、スーパーフェザー級防衛とライト級栄冠で5階級制覇の偉業達成。
デービスにとっては、ライト級防衛とスーパーフェザー級奪還になります。
試合が始まると、両者ジャブを打ち合います。カウンターを狙うデービスは要所要所で良いパンチを当てますが、サンタ・クルスはプレッシャーをかけ続けます。
4Rから徐々に打ち合うようになったデービス。
そして6R、突如としてその瞬間が訪れます。
しびれを切らしたかのように、多少の被弾を気にせず前に出るデービス。
パワーパンチを打ち込むも前に出てくるサンタ・クルス。
そして、不用意に右を3連発で放つと、デービスがその3発目を左にスウェーし、高速の左アッパーを決めます。
その瞬間、サンタ・クルスは両腕をだらりと下げ失神。コーナーに崩れ落ちると、すぐに試合終了となりました。
インパクトの瞬間、サンタ・クルスの顔がねじれているのがわかります。デービスの渾身のアッパーが顎にクリーンヒットしたので、相当な衝撃だったでしょう。
そして、この仰け反らせるような体勢から、強力かつ高速のアッパーを打てるデービスはかなりのバネの持ち主でしょう。
一撃KOシーンはフックやストレートが多いですが、このシーンはアッパーの名手デービスが見せたアッパーでの一撃KOでした。
この失神で、サンタ・クルスはコーナーからしばらく動けませんでした。
アルツール・アブラハム vs. コーレン・ゲボルArthur Abraham vs. Khoren Gevor
続いてはダウンの瞬間が衝撃的なアルツール・アブラハム vs. コーレン・ゲボルの試合を紹介します。
アブラハムはIBF世界ミドル級チャンピオンで、後にスーパーミドルを合わせた2階級制覇チャンピオンになる選手です。
一方ゲボルはヨーロッパチャンピオンで、この試合はIBFミドル級のベルトをかけたタイトルマッチです。
試合が始まると1Rからゲボルが攻めたて、アブラハムをコーナーに詰めます。
2R以降も、終始ゲボルがプレッシャーをかける展開が続きます。
しかし次第にアブラハムが攻勢に転ずる場面が増え、ゲボルに疲れが見えてきます。
そして11R、ついにその場面が訪れます。
開始早々インファイトでプレッシャーをかけていくゲボル。
アブラハムが打ち返し、打ち合いになるとゲボルのアッパーにアブラハムの左のショートがカウンターでヒット。
その瞬間、ゲボルは糸が切れたマリオネットのように脱力。
膝を曲げ座ったたまま失神。その様子を見たレフェリーはすぐにTKOを宣告しました。
スローで見てみると、アブラハムがヒットしたパンチはフルスイングではなく、コンパクトなショベルフックですがゲボルはパンチが見えていないことがわかります。
意識の外から迎え撃つ形でカウンターが決まったので一発で効いてしまったのでしょう。
パンチで一番重要なのはパワーではなくタイミングといわれる所以がわかるシーンです。
当たった瞬間、ゲボルの顔が大きく揺れ動いています。
ゲボルは天井を見上げたまま、しばらく起き上がれませんでした。
アブラハムがコンパクトなパンチで一瞬にして相手の意識を断ち切ったKOでした。
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