日本人史上最高のボクサーとの呼び声の高い井上尚弥選手。
2021年3月現在、リング誌のPFPで2位である彼が今後、初の日本人選手1位になることはあるのでしょうか。
今回は権威があり元祖であるリング誌のPFPを基準に考えていきます。
井上尚弥はPFPになれるのか?立ちはだかる壁とは
PFP(パウンド・フォー・パウンド)とは
PFPとは、全階級で体重差のハンデがない場合、誰が最強であるかを指す称号です。
権威ある米専門誌「ザ・リング」によって、1950年代初期に造られた用語で、現在においてもボクサーおよびファンにとって価値のある称号になっています。
井上尚弥は3番手?
米国のトレーナー、スティーブン・エドワーズ氏は、ボクシング専門メディアで、PFPのTOP3として
- 4階級制覇王者のサウル・アルバレス
- WBO世界ウェルター級王者のテレンス・クロフォード
- 3階級制覇王者の井上尚弥
の名を挙げました。
しかし、エドワーズ氏は井上選手はこの中では3番手であるという考えを示しました。
その理由として
- アメリカが本場であるボクシングにおいて日本人ファイターであること
- 知名度は147ポンド(ウェルター級)以上が高い
- 147ポンド(ウェルター級)未満は層が薄く評価されにくい
ことを挙げました。
日本人であることの知名度の問題は仕方ないとして、確かに歴代のPFP年間1位を見ると、ライト級以上のボクサーであることが殆どで階級の低いボクサーは不利であることがわかります。
元フライ級王者でもあるマニー・パッキャオ選手が1位を初めて獲得したのは2008年のウェルター級の時、井上選手のいるバンタム級の3つ上のスーパーフェザー級の元王者フロイド・メイウェザーが、1位を初めて獲得したのは2005年のスーパーライト級です。
いずれもバンタム級からはかなり上の階級で井上選手にとっては現実的ではありません。
井上選手の身長は164.5cmで、パッキャオ選手は168cm、メイウェザー選手は173cmと身長、骨格から考えてそれらの階級まで上げるのは無理でしょう。
最近では2019年に、バンタム級の2つ上であるフェザー級の元王者ワシル・ロマチェンコ選手が1位となりましたが、その時はライト級でした。
井上尚弥はどこまで階級を上げられる?
では、バンタム級の井上選手はどこまで階級を上げられるのでしょうか。
これに関しては2019年、直接、本人が答えています。
「今の時点では、スーパーバンタム級。ゆくゆくは30歳、4年後に行けてもフェザーだと思う。その時の調子によりますけど。スーパーフェザー級?普通の選手になりますよ。埋もれると思う。」
と、時間をかけた上で2つ上のフェザー級が限度という考えのようです。
井上選手のパンチ力を考えるともっと上の階級も行けると夢を見てしまいがちですが、私自身も井上選手の身長骨格を考えるとフェザー級までが現実的というのが感想です。
無理をしてスーパーフェザー級に上げたところで、並の強さになってしまった井上選手を見たくないのは私だけではないでしょう。
軽量級の選手がPFP1位になることは無理なのか?
では軽量級の選手がPFP1位になることは無理なのでしょうか?
歴代のPFP1位において1人だけ例外の選手がいます。
それはローマン・ゴンサレス選手です。ミニマム級・ライトフライ級・フライ級・スーパーフライ級と4階級制覇を達成した王者で、身長は159.5cmと井上選手よりも5センチも低く、スーパーフライ級はバンタム級の一つ下です。
しかも、ゴンサレス選手は2015年、2016年と2回PFP1位に輝いています。
ゴンサレス選手は50勝3敗という驚異的なレコードを持ち、さらに41KOでKO率82%というこの階級では信じられないようなKO率の高さを誇っています。
なお、3敗は2017年から喫したものでPFP1位獲得時の2015年、2016年では無敗の王者でした。
ゴンサレス選手はニカラグア出身です。
知名度的に不利な国籍で、軽量級においてもこのくらいの圧倒的な実績があればPFP1位を獲得するのは可能ということになります。
井上選手もこれまで20戦無敗、KO率85%と驚異のレコードを持っているので、可能性は大いにあると言えるでしょう。
しかし、井上選手が一つ足りないところがあります。
それは試合数です。
ゴンサレス選手は2005年にプロデビューしましたが、PFP1位を獲得した2015年時点で44戦のキャリアがありました。
井上選手は2012年にプロデビューし、8年後の2020年時点で20戦です。
ゴンサレス選手はプロデビュー8年後の2013年に37戦ですので、試合数に大きな開きがあります。
ロマチェンコ選手は14戦の時点でPFP1位を獲得しましたが、それは階級が上であること、プロデビュー前にアマチュアで397戦396勝という驚異的なレコードを持ち金メダルを何個も獲得しているため、前提が異なります。
時代的な背景を考えると試合数の頻度を比べるのは少し酷かもしれませんが、井上選手がこのまま圧倒的な戦績を収め続け、スーパーバンタム級、フェザー級と階級を上げていけば、初の日本人PFP1位になることは間違いないと確信しています。
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