前回はボクシングにおいての”伝説の一撃”を紹介しましたが、今回はキック・MMA(総合格闘技)での”伝説の一撃”を紹介いたします。
伝説となった一撃
バダ・ハリ vs ルスラン・カラエフ(2)
最初に紹介するのは、2007年に行われたバダ・ハリ(バダハリと読む) vs ルスラン・カラエフの2回目の対戦です。
2000年代中盤に台頭してきた次世代の2人ですが、因縁は半年前から始まります。
1RカラエフにKO負けを喫したバダ・ハリですが試合後、カラエフのキックがダウン後の追撃、と主張し大激怒。
しかし、カラエフは「膝がつく前に蹴っていたのだから反則ではない」と主張し、結局結果は覆りませんでした。
これに納得のいかないバダ・ハリは大暴れしたのです。
その約半年後に組まれたのがこの試合でした。
因縁のリベンジマッチですが試合前、バダ・ハリは
「前回は前回、今回今回と割り切っている。気持ちは切り替えた」
と語っています。
試合が始まると、距離を詰めてパンチを打ち込んでくるカラエフと、リーチを活かしカウンターを狙うバダ・ハリ(1:18)
1Rから激しい打ち合いに、会場はどよめきます。
そして2R、ガンガン前に出てくるカラエフがパンチを効かせ、バダ・ハリ、ダウン。
また、前回と同様カラエフがパンチでKOするのかと思っていた矢先でした。
バダ・ハリが立ち上がり試合再開、のそりと近づいていき左フックを放ってきたカラエフに、バダ・ハリがカウンター一閃。
今度はカラエフがダウンします。
つい数秒前までバダ・ハリが倒れていたキャンバスにカラエフが倒れています。
この衝撃的な展開に観客は大興奮。
失神したカラエフはそのまま立ち上がることなく、バダ・ハリのTKO勝利となりました。
ダウンを奪ってやや大振りになったカラエフの左に、ここしかないというタイミングと位置にヒットした見事なストレートです。
追い込まれた状況で実に冷静なバダ・ハリ。
打ち終わりに飛び出たマウスピースを戻す余裕があるほどです。
半年前の雪辱を果たすとともに、歴史に残る大逆転を演じた一撃でした。
山本KID徳郁 vs 宮田和幸
続いては山本KID徳郁 vs 宮田和幸、総合格闘技の試合です。
この時のKID選手はまだ膝を怪我をする前で全盛期。カットによるドクターストップを除けば、総合での戦績は全勝で多くの試合をKOで勝ち取っていました。
一方、宮田選手はKID選手と同じくレスリング出身の選手です。
衝撃の瞬間はすぐに訪れました。
試合開始直後、飛びかかって飛び膝を決めるKID選手。
顎に入りダウンした宮田選手に追撃で試合終了となりました。
1Rわずか4秒での出来事です。
開始のゴングがまだ鳴り止んでいない状況でのKO劇。
この光景を見ていたファンは度肝を抜かれたでしょう。
このKOで宮田選手は顎を骨折、ワイヤーで固定する手術を受けることになります。
KID選手が見せた瞬殺の一撃でした。
※ IDを指定してください。インパ・カサンガネイ vs ホアキン・バックリー
続いては”史上最もクレイジーなKO”と呼ばれた一撃を紹介します。
インパ・カサンガネイ vs ホアキン・バックリー。総合格闘技の試合です。
衝撃の瞬間は2Rに訪れました。
バックリーが左ハイを放つと、カサンガネイがキャッチします。
するとバックリーは脚をキャッチされたまま後ろを向き、残った右脚でスピニングバックキックを放ちます。
バックリーの踵がカサンガネイの顎を跳ね上げると、カサンガネイは白目をむき失神。
衝撃のKOとなりました。
この試合はノックアウト・オブ・ザ・イヤーとパフォーマンス・オブ・ザ・イヤーを受賞。
このシーンの動画のツイートはリツイート数14万3000件、いいね数35万9000件、再生回数1280万回を記録し、インスタグラムでも1780万回以上再生されました。
バックリーが見せたアクロバティックな一撃でした。
エメリヤーエンコ・ヒョードル vs 藤田和之
続いては日本人選手が最強王者に見せた一撃を紹介します。
エメリヤーエンコ・ヒョードル vs 藤田和之。総合格闘技の試合です。
2003年、当時日本では格闘技ブームで総合格闘技の最高峰の舞台がアメリカではなく日本にあるという贅沢な時代でした。
ヒョードルは、高阪選手の反則の肘によるカットでのTKOを除いて実質無敗の絶対王者。
今でも歴代の最強MMAファイターとして語られるほど、圧倒的な強さを誇っていました。
戦前の予想も、藤田選手の奇跡を望む声もある中、やはりヒョードル有利が圧倒的でした。
試合が始まると、互いに見合いヒョードルがロングフックで攻めますが、藤田選手は決定打を決めさせません。
そして、再びヒョードルがフックを放ってきた時に、テンプルに右のカウンターを合わせます。
これが効いたヒョードルは腰が落ち、バランスを崩します。
今までヒョードルがここまで明らかに効いた場面はありません。
会場は、まさかの光景に大歓声が沸き上がります。
絶対王者ヒョードルにKO勝利か、ましてや日本人がその偉業を達成するのか、と異様な盛り上がりを見せます。
藤田選手はラッシュをかけますがヒョードルが組み付き、グランドに。
その後スタンドに戻り、一気に攻めたい藤田選手ですが攻めきれません。
徐々に回復してきたヒョードルがパンチを効かせ、藤田選手をダウンさせるとバックからチョークを取り、藤田選手無念のタップアウト。
ダウン寸前のところから、回復、パンチ、チョークと逆転勝利を決めたヒョードル。
この冷静さも絶対王者と言われる所以でしょう。
その後、ヒョードルは2010年まで無敗、10年間無敗の帝王でい続けます。
日本人選手が最強の絶対王者を絶体絶命まで追い詰めた一撃でした。
ジェロム・レ・バンナ vs フランシスコ・フィリオ
最後に紹介するのはこの一撃。
ジェロム・レ・バンナ vs フランシスコ・フィリオでの一撃です。
フィリオはデビュー戦で、実力者のアンディ・フグを1R1撃KO、2戦目、3戦目も1R1撃KOと、”一撃必殺”の異名を持っていました。
一方バンナは、左腕を怪我する前、肉体をビルドアップした全盛期で、
試合前、
「会場から一番近い病院のベッドをフィリオのために予約しておいてやってくれ」
と、かなり殺気立っている状態でした。
試合が始まると両者距離を取り合い、攻撃が当たっていなくても会場がどよめくほど、緊張が張り詰めていました。
両者、決定打がないまま2分すぎになると、その瞬間が訪れます。
バンナが肩でフェイントし、やや後ろにステップすると、勢いをつけて左ストレートを放ちます。
体重が乗ったバンナのパンチが、腕が伸びたちょうど良いところでフィリオの顎にヒット。
これ以上ないクリーンヒットです。
これをくらったフィリオは失神。
ロープに腕をかけ、目を開けたままピクリとも動きません。
一撃必殺の異名を持っていたフィリオが、一撃で失神KO負けをしたのです。
衝撃の光景に解説を務めていた石井館長は興奮気味に
「駄目だ駄目だ。危ない危ない」
と叫んでいました。
緊張の時間が続く中、バンナはまさに一撃で試合を終わらせたのです。
試合後バンナは、フィリォが意識を取り戻して悔し涙を流しているところに駆け寄り、「泣くな!君は極真の王者なんだから!」と激励したそうです。
その後、この試合は”千年に一度のKO劇”と呼ばれ、多くの人がK-1ベストバウトに挙げる試合となりました。
全盛期のバンナが見せた”千年に一度の一撃”でした。
おわりに
最後までご視聴いただき誠にありがとうございます。
他にも、”キック・MMAの伝説の撃”があるかと思います。
ぜひ、コメント欄にて皆さんの印象に残っている”キック・MMAの伝説の撃”を教えていただけたら嬉しいです。
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