マーロン・タパレスという男【井上尚弥次戦の相手】

PR

井上尚弥選手とのスーパーバンタム級4団体統一戦の相手マーロン・タパレス。
今回はタパレスの生い立ちからボクシングスタイル、井上選手との試合考察を語っていきます。

目次

マーロン・タパレスという男

マーロン・タパレス。40戦37勝19KO3敗。
身長 163cm、リーチ 165cm、フィリピン出身のサウスポーで、元WBO世界バンタム級王者、現WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級統一王者の世界2階級制覇王者です。

地元フィリピンのメディアからは「ナイトメア(悪夢)」という愛称で呼ばれ、その由来は、”相手選手に悪夢を見せつけるから”と言われています。

フィリピンの北ラナオ州で、8人兄弟の一人として生を受けます。

10人家族の大所帯で、親の稼ぎだけでは到底生活できるレベルではなく、タパレス自身も学校に通いながら養豚場で働いていました。

タパレスが9歳になった時、当時フィリピンで活躍していたジェリー・ペニャロサの試合を見てボクシングに興味を持ち始めます。

そして12歳になった頃、一緒に養豚場で働いていた友人からボクシングを勧められたのをきっかけに、「ボクシングで世界チャンピオンになることを夢見始めます。

それを聞いたタパレスの兄弟たちは、タパレスにグローブやマウスピースをプレゼントしてくれます。

しかし、当時のマーロン家にはボクシングジムに通えるお金などあるはずもなく、もらったグローブやマウスピースを使い、見よう見まねで独学でボクシングを学んでいきました

タパレスは最近では珍しくアマチュア経験のないボクサーです。
しかし、タパレスは日本でいうところの「地下格闘技」的な非公式のリングで、約30回ほど試合を経験していたそうです。

そこで戦う相手は体重も身長もバラバラ、ヘッドギアもマウスピースすら付けない、危険なボクシングでした。
ただし、当時のタパレスにとってはボクシングも経験できて、お金ももらえるという、これ以上ない素晴らしいリングだったといいます。

プロデビュー

そして15歳になると高校を中退。
2008年には16歳で、ネストール・ガモロに1RTKO勝利し、華々しいプロデピューを飾ります。

その後、8連勝を飾り2009年にフィリピンPBFフライ級タイトルに挑みますが、6R棄権負けで王座獲得失敗するとともに初の黒星を喫します。

しかし、後に井上選手と対戦するヘルソン・マンシオを含むボクサー3人に3連勝し、これも井上選手と対戦することになるワルリト・パレナスとフィリピンGABライトフライ級王座決定戦を行い、7R1TKO勝ちを収め王座獲得に成功。

その後、14勝1敗という高戦戦績を重ね、2015年大森将平とWBO世界バンタム級挑戦者決定戦を行います。

試合は1Rからタパレス左オーバーフックでダウンを奪い、2Rまでに4度のダウンを奪いTKO勝ち。
世界挑戦権を掴みます。

そして2016年、WBO世界バンタム級王者プンルアン・ソー・シンユーと対戦し、11RKOで初の世界王座獲得に成功。
WBOの2016年8月度月間MVPに選出されます。

2017年、防衛戦として大森選手と再戦しますが体重超過により王座剥奪。
11RKO勝利したものの、タイトルを手放すことになります。

その後3連勝をはさみ2019年、日本の岩佐亮佑選手とIBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦をおこないます。
試合は3Rに岩佐の左ボディでタパレスがダウン。タパレスはバッティングによるダウンをアピールしますが、裁定はダウン。
11Rには、岩佐の左ストレートで再びダウン。立ち上がったものの、フラついたところでレフェリーが試合を止め、11R1分9秒TKO負けを喫します。

しかしその後は、エデン・ソンソナに2RTKO勝利。勅使河原弘昌選手とのIBF世界スーパーバンタム級挑戦者決定戦で2RKO勝利。
ホセ・エストラーダに2RKO勝利します。
そして2023年、怒涛の3連続2RKO勝利を引っ提げ、WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級統一王者のムロジョン・アフマダリエフとタイトルマッチをおこないます。

アフマダリエフは11勝8KO無敗の2団体統一王者で、3連続防衛中。
その防衛の中には、タパレスが負けた岩佐選手との試合も含まれます。

戦前の予想は、オッズがアフマダリエフ1.2倍・タパレス4.3倍と、スーパーバンタム級でフルトンと双璧をなしていたアフマダリエフ有利の声が多くありました。
しかし蓋を開けてみると、タパレスの独特の間合いにアフマダリエフが苦しめられる展開になります。

試合は12Rまでもつれ込み、2-1の僅差の判定勝ちでタパレスが2団体統一王者になると同時に2階級制覇を達成したのです。

そして2団体統一王者になってからの初戦が井上選手との4団体統一戦になります。

当初、井上選手のフルトン戦の次戦の相手はアフマダリエフと見られていましたが、タパレスは大番狂わせで井上選手との対戦を勝ち取ったのです。

タパレスの強み

格下と見られるタパレスですが2015年以降は12戦11勝9KOと、勝率KO率ともに高い選手です。

好戦的と言われる選手ですがガンガン前に出るスタイルではなく、中間距離で戦う選手です。
井上選手も中間距離が得意なので面白い試合になりそうですね。

構えが低く、後ろ重心の独特の広いスタンスで、時折L時ガードを駆使しながら距離を保ちます。

飛び込んできた相手には被せるような右フック。
遠い距離からはリズムをずらして、大きく踏み込んだ左ストレート。

井上選手も
「ごりごりのファイターという印象を持っていたが、試合を見返して変わった。上体の柔らかさ、ディフェンスの良さ。思った以上に技術が高い。
周りの方の評価以上に、危機感を感じている。パワーパンチがあり、独特のタイミングで打ってくるというところもある。」
と言うように決して技術のない選手ではないのです。

そして井上選手の父・真吾トレーナーも言っていた通り、一発があるという点ではフルトンより危ない選手と言えるでしょう。

タパレスの一番の武器はやはり右フックでしょう。
低い構えから頭を斜めに下げ、腕を上から覆いかぶせるような独特なオーバーハンドのフォームで打ってくるパンチで、多くのダウンをこのパンチで奪っています。

特に相手が入ってきた時、ジャブを打ってきたときに被せてくる右フックは、相手の目線が下になっており、かなり見づらそうです。

タパレスと対戦した岩佐選手は勝利しながらも
「タパレスの右フックは、見えにくい角度からいきなり飛んで来るんです。しかも、思った以上に伸びてくる。ジャブの距離よりも長いフックが飛んできますから」

と戦いにくい相手と語り、勅使河原選手も同様にタパレスの右フックは見えづらいと語っていたそうです。

他にも、遠い距離からノーモーションで放たれる左ストレート、およびオーバーハンド。
タイミングをずらして飛び込んで打ってくるので、相手としては射程圏外にいると思ったら突然左ストレートを食らう感覚でしょう。

岩佐選手も
「基本的に引いて待つタイプで、距離の取り方、空間支配がうまい。常にカウンターを狙っていたと思います。例えるなら、いつも後出しジャンケンしてくる感じ。先に僕が手を出してから、それに合わせて違うパンチを出してくる。それでいて、前に出てくるときはパワーがあるし、独特のタイミングで打ってくるんです」
と、井上選手と同様に独特のタイミングを評価しています。

井上選手のジャブやレバーブローに右フックを合わせてきたり、距離を置いて油断したタイミングで左ストレートが飛び込んでくるなど、気の抜けない一発を持っていると言えるでしょう。

他にも低い姿勢から弧を描くような軌道で突き上げてくるボディアッパーなど、バトラーやフルトンとは違った危なさを持った選手です。

そして、井上選手以外にも多くの人がタパレスの成長を感じており、大橋会長は
「尚弥と一緒で、だいぶ印象が変わった。昔と今のタパレスはまったくの別人。今は強くなって、すごくうまくなっている」
と語り、
岩佐選手も、自分が戦ったときより強くなったと語っています。

直近のアフマダリエフ戦を見ると、昔の試合よりディフェンスへの意識が強く、距離の取り方やブロッキング、ボディワークなどディフェンスのバリエーションも増えています。

また、攻撃面ではアッパーを上手く使うようになった印象です。
相手が距離を詰めてきたときに、狭い空間から放たれるショートアッパーを有効に当てていました。
ジャブも鋭く、踏み込んで放ってくるのでリーチ以上に距離が長いです。

井上選手の
「ゴリゴリのファイターという印象を持っていたが、上体の柔らかさ、ディフェンスの良さ、思った以上に技術の高い選手。1年前の4団体統一の気持ちとは違う。危機感は違う」
というコメントにも納得です。

タパレスの弱み

ここまでタパレスの強い点を上げてきましたが、タパレスの弱点も見ていきましょう。

一つはスタミナです。
ここ数年は早いラウンドでのKOが多いタパレスですが、過去の試合を見てみると、長く続いた試合では後半の動きが落ちています。
アフマダリエフに判定で勝利しましたが、この感じだと井上選手相手に判定勝ちは難しいと思われます。

そして、ディフェンスのフットワークも良くないように思います。
オフェンスでは鋭い踏み込みを見せるタパレスですが、ディフェンスではフットワークで距離で外すというよりも、ボディワークやブロッキングで外すことが多いです。

ですので、ロープ際に詰められることも多く(特に後半)、井上選手であれば引き付けてからサイドに逃げるような場面でも、ブロッキングかカウンターなど打ち合いに出る事が多いです。
ハードパンチャーで距離感に優れている井上選手相手には危険な選択肢です。

バックステップもするのですが、機敏さ、スピート、一歩での移動距離など井上選手には大きく差がある印象です。
根っからのアウトボクサーであるフルトンにすら、ジャブで打ち勝っていた井上選手なので、ジャブの差し合い、中間距離は井上選手が支配すると思います。
そして井上選手の素早い踏み込みには対応できないと予想します。

得意のショートアッパーも井上選手のバックステップ(ヒットアンドアウェイ)で中々当たらないのではないでしょうか。

まとめと試合予想

タパレスはサウスポーですが、井上選手自身はサウスポーに苦手意識はないと語っており、過去の試合でもサウスポー故に苦戦したことはないので問題ないと思います。

そして、身長 163cm・リーチ165cmのタパレスに対して、井上選手は身長 165cm・リーチ171cmと、体格差でも不利ではありません。

他にも、パワーやハンドスピード、反応の早さ、ディフェンス技術など多くの面で井上選手がまさっています。
勘違いしてほしくないのが、けしてタパレスが著しく劣っているとか、能力のない選手ということではありません。
井上選手の能力があらゆる面で高いということです。

ジャブに対する右フックのカウンターは脅威ですし、井上選手のレバーブローにも合わせてくるかもしれません。
タイミングの読みづらい左のオーバーハンドは、遠い距離からも踏み込んでくるので、フルトン戦でのワンツーのような被弾があるかもしれません。(浅いヒットでしたが)

今回、多くの方がタパレスを格下として大きく差があると評価していますが、個人的にはバトラーよりも可能性はあると感じています。

フルトンやエマニュエル・ロドリゲスの時ほどの勝負論はないが、バトラーやダスマリナス、ディパエンよりは全然ある、といった感じでしょうか。

展開としては、井上選手が試合を掌握し、タパレスは慎重に距離を取りジャブ、時折パワーパンチを放つ。
そして、中盤に井上選手が左ボディか左フックを効かせてKOと予想します。

タパレスの勝ち筋としては、やはり右フックのカウンターか遠い距離からの左を効かせてKOではないでしょうか。
しかしながら、その確率はかなり低いと思います。

皆さんの予想考察はいかがでしょうか。
是非コメント欄にてお聞かせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次