スティーブン・フルトンを衝撃のKOで倒し、WBC・WBOスーパーバンタム級王者となった井上選手。
さらに階級を上げることを示唆している井上選手に立ちはだかることになりそうな強敵を紹介していきます。
今後、井上尚弥が戦う相手たち
マーロン・タパレス
現WBAスーパー・IBF世界スーパーバンタム級統一王者で、元WBO世界バンタム級王者のニ階級制覇王者です。
井上選手がフルトンとの試合後、リング上で対戦を約束しており、マッチメイクも問題なくスムーズにいくと言われています。
戦績は40戦37勝19KO3敗。身長163センチ、リーチ165センチと、身長165センチ、リーチ171センチの井上選手のほうが身長リーチでは有利です。
現在のベルトは、スーパーバンタム級でフルトンと双璧をなしていたムロジョン・アフマダリエフから奪ったものです。
好戦的なサウスポーで、低いスタンスから放たれる右フックのカウンターや、伸びの良い左ストレート、切れのある左クロスが特徴です。
日本人とも何度か対戦しており、木村隼人選手、大森将平選手、勅使河原弘晶選手に勝利し、岩佐亮佑選手に負けを喫しています。
WBO世界バンタム級王者になった後は、防衛戦で体重超過をし、TKO勝利するものの王座は防衛することなく剥奪されています。
戦績では判定が多いものの、ここ数年の試合ではKO率の高い選手で一発を持っており、独特の距離感が厄介な選手です。
井上選手と同じスーパーバンタム級の2団体統一王者ですが、実力的には井上選手より下と見られ、井上選手有利の声が多いのが現状です。
試合が行われれば井上選手のスーパーバンタム級での4団体統一は固いのではないかと思われます。
ルイス・ネリ
大橋会長が「盛り上がる」として、タパレス戦後の対戦相手の候補の一人として挙げていたのがルイス・ネリです。
元WBC世界バンタム級王者。元WBC世界スーパーバンタム級王者のニ階級制覇王者で戦績は35戦34勝26KO1敗。
身長165センチ、リーチ169センチ。
唯一の黒星は、フルトンに負けたフィゲロアから喫したものです。
悪童の異名を持つネリは、多くの日本のボクシングファンから反感を買っており、井上選手もTwitterで怒りを露わにしていたことがあります。
ネリと日本ボクシングファンの因縁は2017年に遡ります。
当時、WBC世界バンタム王座を12連続防衛していた無敗の山中慎介選手。
2017年8月15日、具志堅さんと並ぶ13連続防衛の記録をかけての試合の相手に選んだのがネリになります。
結果は山中選手が4RTKOで初の黒星を喫するとともに、連続防衛記録が途絶えます。
しかし問題はその約1週間後に発覚します。
この試合に先立って行われたドーピング検査で、ネリの検体からクレンブテロールに非常に酷似した禁止薬物のジルパテロールに対する陽性反応が出たのです。
リングマガジンはネリからリングマガジン認定王座を剥奪して、山中選手が同王座に復帰したことを発表。
2017年10月31日、結局WBCは「故意にジルパテロールを摂取したという確証が得られず、汚染された食品により摂取した可能性がある」としてネリに対する処分はせず、山中とネリに対し再戦するよう指令。
(併せてWBCが進行するクリーン・ボクシング・プログラム(CBP)で、ネリに対するドーピング検査が2017年7月27日に行われ、同年8月22日にA検体からジルパテロールに対する陽性反応が出たとVADAから通知を受けたこと、ネリが検査を要求しなかった為にB検体は検査されなかったこと、ネリはこれまでCBPで4回受けたドーピング検査が全て陰性反応で、ジルパテロール検出後に日本で受けた3回のドーピング検査も全て陰性反応だったことなどが説明されました。)
なんとも後味の悪い形でタイトルを奪われた山中選手ですが、2018年3月1日、再び相まみえることになります。
しかし、またしても問題が起きてしまうのです。
前日計量でネリはなんと2.3キロのオーバー。2時間後に再計量するも1.3キロオーバー。
これには山中選手が「ふざけるな」と珍しく怒りを露わにし、悔し涙を流します。
この時点で王座は空位となり、山中選手が勝った場合は王座獲得、負けた場合は空位になるということで試合は行われることに。
結果は2R1分3秒TKOで、山中選手が雪辱を果たすことはできず、この試合を最後に引退。
この一連の出来事で、JBCはネリを招聘禁止、日本での事実上の永久追放処分である無期限の活動停止処分を課しました。
そんな胸糞悪い出来事で、多くの日本のボクシングファンはネリに対して怒りを持っているのです。
ネリはその後も、パヤノ戦の計量で体重オーバーし、再計量でクリア。
エマヌエル・ロドリゲス戦でも約0.45キロオーバー(実際は0.8キロとも)し、ロドリゲス側が試合をキャンセル。
後に、トレーナーのフレディ・ローチが、ネリが計量前日にレッドブルを飲んでいたことを暴露。
確信犯的な体重超過を度々犯しています。
以前から井上選手を挑発していたネリですが、この体重超過に対して井上選手は
「ネリどうしようもねぇな、、また計量失格
こんな奴にゴタゴタ言われたくない。ボクシング界から追放でいい」
と、怒りのツイート。
そんな因縁があり、大橋会長が「盛り上がる」対戦相手として挙げたのがネリなのです。
素行の悪いネリですが、実力は確かでパワーのある左右のフックで34勝のうち26KOを記録しています。
2023年2月にはWBC世界スーパーバンタム級挑戦者決定戦に勝利し、タパレスの次に近い挑戦者と言えるでしょう。
ジョンリル・カシメロ
ライトフライ級、フライ級、バンタム級の三階級制覇王者で、37戦33勝22KO4敗。
身長163センチ、リーチ164センチです。
カシメロもまた、大橋会長が「盛り上がる」として、対戦相手の候補の一人として挙げ、井上選手と因縁のある選手です。
両者がバンタム級時代、井上選手が持っているWBA・IBFのベルトとカシメロが持っているWBOのベルトをかけて、2020年3月に戦う予定でしたがパンデミックの影響により中止、立ち消えとなります。
その後、カシメロやカシメロのプロモーター・ギボンズ氏が井上選手を亀呼ばわりし、度々挑発を繰り返します。
ドネアと統一戦が決まり、その勝者が井上選手と戦うという話が出ていましたが、カシメロがドーピング検査の書類提出が遅れた、とドネアが主張(双方に言い分あり)し試合はキャンセルとなります。
これに井上選手は
「カシメロ君はもう大口を叩く事はないでしょう。 ドーピング検査を回避する奴に資格などねぇ。。 お疲れでした。」
と呆れた様子でツイート。
リゴンドー戦では勝利後に
「リゴンドー、ドネア、次はイノウエだ!」
とカメラに中指を立て挑発。
この試合をゲスト解説で見ていた井上選手は
「この試合は(対戦したいので)カシメロを応援しながら見ていましたが、最後ああいう態度されたら……自分がたたきのめしたいと心の底から思いました。日本ファンの期待に応えたい。いち早くカシメロとやりたいなと。カシメロ、倒します。問答無用に倒します。ただ勝つだけじゃなくああいうことしてもらえるとモチベーションも上がりますし」
とコメントし
”リスペクトのない奴は叩きのめす
以上。”
とツイート。
ポール・バトラーとの防衛戦が決まりますが、前日計量をウイルス性胃腸炎のため欠席し、試合は中止に。バトラーとの防衛戦が再設定されたものの、英国ボクシング管理委員会の医療ガイドラインで禁止されている、試合直前のサウナを使用しての減量を行っていたことが発覚したため、またも試合中止に。
カシメロの度重なる試合キャンセルを重く見たWBOは、カシメロの王座剥奪を決定します。
結局、バンタム級で両者が戦うことはありませんでしたが、現在二人ともスーパーバンタムに階級を上げ、大橋会長が対戦相手の候補に挙げると同時に、井上選手自身が対戦を希望している選手です。
ネリ、カシメロ両者に言えることが勝敗の心配よりも、無事に開催されるかの心配が大きいことです。
両者、試合外でトラブルを起こしてきた常習犯で、もし井上選手との試合が中止となったら経済的にはもちろん、貴重な井上選手の試合、時間を奪うことになりかなりハイリスクとなります。
仮に計量オーバーされ、無理に開催したとしても山中選手の件もあり、スッキリしない胸糞悪い気持ちのまま試合を観なければいけないことになります。
ストーリーはありますが、勝敗とは違う意味でリスクのある選手と言えるでしょう。
ロベイシ・ラミレス
スーパーバンタムから階級を上げるとフェザー級の猛者たちが待ち構えています。
現在、4人の王者(暫定王座を含めず)レイ・バルガス、リー・ウッド、ルイス・アルベルト・ロペス、ロベイシ・ラミレスがいますが、その中で最強と目されているのがロベイシ・ラミレスです。
プロ戦績は14戦13勝8KO1敗。プロデビュー戦で負けを喫したもののそれ以降は無敗です。
身長165センチ、リーチ173センチです。
プロでの実績よりも、アマチュアで圧倒的な実績を残した選手です。
ユース選手権やオリンピックで2度金メダルを獲得。
2016年のリオオリンピックでは、準決勝でアフマダリエフを破り、決勝では現在ライト級最強の一角シャクール・スティーブンソンに勝利して優勝を果たしています。
サウスポーでオリンピアンらしい確かなテクニックとスピード、パワーを兼ね備えた選手で、井上選手との対戦が実現すればレベルの高い攻防が見られそうです。
ロベイシは井上選手と同じプロモーターのトップランクと契約しており、井上vsフルトンの前座として防衛戦が行われKOで勝利しています。
試合後、トップランクCEOのボブ・アラム氏は、井上選手がフェザー級に上げた後の対戦相手候補としてロベイシの名を挙げ、日本の人に知ってもらうために前座にロベイシの試合を組んだことを話しています。
同じプロモーターということもあり、スムーズなマッチメイクが期待できる選手でもあります。
井上選手がスーパーバンタム級で戦っている間に、ロベイシが4団体統一王者になればフルトン戦を超えるビッグマッチとなるので、ロベイシには頑張って欲しいですね。
亀田和毅
バンタム級、スーパーバンタム級の元二階級制覇王者で、戦績は43戦40勝22KO3敗、WBAスーパーバンタム級1位。
身長171センチ、リーチ170センチです。
ご存知亀田3兄弟の三男で、デビューから長らく日本ではなくメキシコで戦ってきた選手です。
井上選手に対し「勝つ自信がある」など強気な発言をし、対戦が噂されています。
本人も井上選手との対戦を希望し、(2023年1月時点で)
「まずは(自分が)チャンピオンになること。井上チャンピオンはまだ(バンタム級の)王座を返上していないし、いつ上がってくるかもわからないが、タイミングが一致すればね。俺がチャンプで向こうが挑戦者なのか、逆なのか、統一戦になるかわからない。まずは2月の試合に圧倒して勝つこと」
と発言し、2月のルイス・カスティージョ戦で5RTKO勝利。
「勝つ自信がある」という発言については
「井上チャンピオンはライトフライ級から上がってきた選手。オレは最初からバンタム級。ボクシングは階級制のスポーツで、バンタム級からスーパーバンタム級、スーパーバンタム級からフェザー級と上がる、この1階級が大きい。これは選手にしかわからない。オレもスーパーバンタム級に上げた時に(相手の)パワー、体の強さを感じた。バンタム級ではバンバン倒せていたのにスーパーバンタムでは倒せない。井上チャンプはどうなるのかわからないが身長が違う。(井上は)165(センチ)。スーパーバンタム級では、170(センチ)が最低ライン。リーチ、ひとつ拳が届かないということが出てくる。そういうところがあるので(井上戦が)実現すれば、こっちが有利かなと」
と、根拠を語りました。
2021年12月にWBA世界スーパーバンタム級王座次期挑戦者決定戦で勝利し、当時チャンピオンだったアフマダリエフへの挑戦権を獲得。
しかし、その後王者はタパレスとなり、WBAは井上vsフルトンの勝者とタパレスが統一戦を行うことを承認します。
結局WBAは、和毅選手とアフマダリエフに、井上vsタパレスの勝者への挑戦者決定戦を指示しました。
タイトルマッチの挑戦権を得ているにもかかわらず、長らく順番待ちをしている状況でタイトルマッチの資格のある選手なのです。
しかし和毅選手は、アフマダリエフとの挑戦者決定戦をおこなわず、フェザー級に上げることを決めたようで、フェザー級での井上選手との対戦を視野に入れており
「強い選手と戦いたいという気持ちはあるので、次の試合まず勝って来年中(2024年)に世界チャンピオンになる。
そこで井上選手も階級を上げてタイミングが合えば、試合ができたら日本が絶対盛り上がると思う」
と語っています。
大橋会長は
「(和毅選手との試合について)井上に聞いたの。まぁ、フルトンのことしか考えてないって(フルトン戦前)。で、本人がやりたいのはネリ、カシメロ。そっちに興味がある。
強いヤツとやらせてくれって」
と、語るように井上選手は強い選手と認めておらず、乗り気ではないようです。
2022年、亀田興毅氏があるインタビューで「井上選手は確かにすごい。でもそれは一部の選手であって、全体で見るとボクシングは苦しい状況にある」と語った際、井上選手は
「自分がそういうものにしたのによく言いますね。。(独り言)」とツイート。
何に対する苦言かは明かしていませんでしたが、多くのファンがタイミングや内容から、興毅氏のインタビューへの反応だと推測しました。
2019年にもある番組で
「自分がプロ転向する時(2012年)のプロボクシング界が好きじゃなかった。勝てる相手を選んで試合をする、それがテレビで流れちゃうっていう時代だったんで」
「自分はそうじゃないと思ったし、やっぱりボクシングっていうのは真剣勝負、どっちが勝つかわからない試合をするからお客さんが熱くなるわけで。辰吉丈一郎さんだったり、畑山隆則さんだったり、あの(ボクシングで)沸かした時代を取り戻したいのがあったんですよ。それはパフォーマンスで客を引きつけるんじゃなくて、ボクシングを見に来たお客さんで溢れ返したかったんですよ」
と語り、多くのファンが亀田選手たちのことを言っていると予想しました。
対戦すれば井上選手にとって2016年ぶりの日本人対決ですが、乗り気ではないのはそういったところもあるのかもしれません。
井上選手が1RTKOで下したマクドネルに二度負けており、三段論法とはいきませんが、やはりこの試合も井上選手有利な声が多いです。
フェザー級その他
他にも、WBC暫定王者であり、フルトンとの対戦経験のあるブランドン・フィゲロアがいます。
フィゲロアは好戦的なファイターなので、井上選手と戦うことになればエキサイティングな試合が見られそうです。
そして、井上選手に負けたフルトンもフェザー級に上げることを示唆しており、井上選手との再戦を希望しています。
しかしながら、前戦で井上選手との実力差は明らかで、試合中の足踏み行為や試合後の態度など井上選手は快く思っていないようなので、再戦は難しいかもしれません。
那須川天心
ここから先は現時点では現実的ではないドリームマッチの候補を紹介していきます。
言わずとしれたキック界の神童、那須川天心。
世紀の武尊戦を最後に無敗のままキックボクシングから2023年にボクシングに転向し、初戦は判定勝利を収めています。
実は、井上選手が天心選手について触れたことがあります。
ボクシング初戦の後、知名度からかデビュー戦にもかかわらず、ネット上では多くのファンが井上選手と天心選手を比べていました。
そんな状況に井上選手は
「みんなさ、デビューしたばかりの天心と俺を比べるのは流石に可哀想だからやめーや。。
素材は一流だからいつか戦える日が来るまで楽しみにしておる
そして俺も絶対に負けられない、、」
とツイート。
これに対し天心選手は
ボクシング漫画”はじめの一歩”の
今はまだ歯が立たないが、いずれは追いついてみせるという意味合いのシーンの画像を引用。
天心選手は多くのボクシング関係者がその才能を認めており、井上選手と同じ階級であることから将来的な対戦を夢見る人も多いです。
天心選手が井上選手に挑戦するステージに行くには、かなり長い道のりですが対戦が決まればかなり話題になることは間違いないですね。
ワシル・ロマチェンコ
フルトン戦後、専門メディア「BOXeRingWEB」は、ボブ・アラム氏が驚きのマッチメイクを計画していると報道します。
それがワシル・ロマチェンコとのビッグマッチです。
ロマチェンコはフェザー級、スーパーフェザー級、ライト級の元3階級制覇王者で20戦17勝11KO3敗。
アマチュア時代の戦績は396勝1敗。
PFPランキングで1位に君臨していたこともある正真正銘のビッグネームです。
身長170センチ、リーチ166センチとライト級では比較的小柄です。
“BOXeRingWEB”は、「ボブ・アラムは決闘を計画している。井上尚弥対ロマチェンコ」とし「井上のためのプロジェクトは絶対に爆発する。彼はロマチェンコに対して、すぐに井上をリングに送りたいと思っている。そして商業的な観点からは信じられないほどの成功になる」と報道。
また”BoxingScene”も「ボブ・アラムは井上がロマチェンコと対決する可能性に興味をそそられている」と報道。
ボブ・アラム本人は
「現時点ではちょっとばかげている、おそらく1、2年以内にはそれができるようになるだろう」
と、将来的には実現可能と意欲的です。
ロマチェンコは井上選手と同じトップランクと契約していることもあり、ライト級でありながらドリームマッチとして名が挙がったのです。
しかし、ロマチェンコは現時点でライト級、1階級下げてもスーパーフェザー級です。
スーパーフェザー級で戦うとしても、井上選手のスーパーバンタム級からフェザー級を超えて2階級上げる必要があります。
井上選手は、スーパーバンタム級でしばらく戦うことを公言していることから、フェザー級に上げるのですら早くても2025年と予想され、スーパーフェザー級となると未知数です。
現在35歳のロマチェンコは戦う頃には37歳以上です。
ロマチェンコは全盛期が過ぎ、井上選手は適正階級ではない可能性があり、両者がピークとは言えないマッチになると思われます。
しかしながら、ネームバリューから実現したら話題になることは間違いないでしょう。
ジャーボンテイ・デービス
そしてフルトン戦後、待望論としてよく挙がっているのがジャーボンテイ・デービスとのドリームマッチです。
大橋会長や米メディア、デービスの師匠的な立ち位置のメイウェザーが井上選手とデービスの試合を熱望しています。
デービスはスーパーフェザー級、ライト級、スーパーライト級の三階級制覇王者で29戦29勝27KO無敗。
井上選手を超えるKO率で、激戦区のライト級で最強の一角と目されています。
デービス自身、井上選手との対戦について聞かれ
「面白い試合になるだろうな。ぜひやってみたい。技術戦になる。
ただ、イノウエにとって俺は大きすぎる」
と答えています。
身長166センチ、リーチ171センチとデービスもライト級では小柄で、ほとんど井上選手と変わらないことも待望論が出る要因でしょう。
デービスはKOアーティストですが、ガンガンパワーパンチを振るう手数の多いタイプではなく、しっかりとしたボクシングスキルを持っており、一撃で効かせるタイプです。
井上選手と戦うことがあれば、ハイパワー、ハイスキル同士の緊迫した試合になることは間違いありません。
井上選手はドネアというビッグネームを倒しましたが、「ドネアはすでに衰えていた」と言われることも少くありません。
しかし、デービスとの年齢差は井上選手が約1年半上で、この試合にはそういったケチがつくことはないでしょう。
こちらも問題はやはり階級の差です。
現在デービスはライト級で試合をしており、井上選手のスーパーバンタム級とは三階級差があります。
大橋会長は、キャッチウェイト(正規の階級の規定体重ではなく、事前に両選手間の話し合いで決められた体重)での試合を構想していましたが、Aサイドを主張するデービスは自分にとって有利な条件を突きつけてくると思われます。
ですので、ライト級に近い契約体重でしか成立しないのではと予想します。
そうなると、仮に成立しても井上選手にとってかなり不利な条件での戦いになるでしょう。
ボブ・アラムはデービス戦について「122ポンドと小柄な井上が本質的に140ポンドの選手と戦うことをなぜ語るのか? 意味がないことだ」
デービスと同じライト級のシャクール戦についても「おそらくはないだろう。なぜなら大きすぎるからだ」
と語っています。
どこまで階級を上げるのか
よく、井上選手はパッキャオと比較されることがあります。
パッキャオは身長166センチ、リーチ170センチとほぼ井上選手と同じで、井上選手と同じライトフライ級からキャリアを始め、スーパーウェルター級まで階級を上げていった選手です。
ライトフライ級~スーパーウェルター級の幅は11階級で、体重の幅でいうとなんと20キロ以上あります。
ですので、井上選手がライト級まで上げるのは簡単なように思う方もいるかもしれませんが、パッキャオはかなり特殊であることを考慮しなくてはなりません。
現在、複数階級の最高記録は6階級で、デラ・ホーヤとパッキャオが記録しています。(パッキャオはベルトを獲得したのは6階級)
デラ・ホーヤは6階級目のミドル級で1勝1敗した後、すぐに階級を下げています。
また、戦っていた階級幅も6階級です。
5階級制覇を達成したのはこれまで5人です。(デラ・ホーヤとパッキャオを除く)
そう考えるとパッキャオは異質の存在であり、パッキャオと比較することは現実的ではないと思います。
井上選手は現在、4階級制覇ですが、フライ級を飛ばして王座を獲得しているので階級幅としては5階級です。
フェザー級に上げれば6階級、スーパーフェザー級に上げれば7階級、ライト級に上げれば8階級幅ということになるので、ライト級での試合はかなり無理があることがわかると思います。
ではなぜ、井上選手との試合の待望論にライト級の選手の名前が挙がるのでしょうか。
それは井上選手の近い階級に有名な選手がいないからです。
ボクシングファンが望む試合は強者同士の試合。特に海外のファンはタイトルマッチよりも、対戦相手の質で評価をする傾向にあり、スーパーフェザー級以下では、これまで挙がったようなビッグネームがいないのが現状です。
これは井上選手の能力とは関係のない部分で、階級の競技人口や人気、時代の運にも左右される部分です。
バレラ、モラレス、マルケス、パッキャオといった有名選手が、スーパーバンタム級やフェザー級にいた時代であれば、ライト級の選手との無理な待望論も出てこなかったはずです。
以前から、大橋会長や井上選手はフェザー級までは階級を上げることを公言しており、それ以降は今のような圧倒的な強さを発揮できないだろう、と語っています。
しかし2023年8月、Leminoのドキュメンタリー番組で
「最終章、スーパーフェザーで挑戦なんてできちゃったら、本当に悔いのないボクシング人生なのかなと。
そこに関しては夢の夢ですけどね」
とも語っています。
35歳での引退を決意している井上選手ですが、皆さんはこの先どんなストーリーを見たいですか?
階級を上げていって強敵に挑戦する井上尚弥、適正階級の中で圧倒的な強さを見せ続ける井上尚弥。
どちらが見たいでしょうか?
ぜひ、コメント欄にて感想をお待ちしております。
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