格闘技において失神KO・フィニッシュは一番盛り上がるシーンですし、ある種怖いもの見たさのようについ見たくなってしまうものです。
今回は数多くある失神KO・フィニッシュの中でも、衝撃的な失神となった試合を紹介します。
衝撃的な失神KOの試合
粕谷栄vs宮川博孝
衝撃的なシーンは2011年10月、オクタゴンで生まれました。
粕谷栄vs宮川博孝の総合格闘技の試合です。
粕谷選手が何らかのダメージで口から大量の出血がみられ、試合は一時中断します。
その出血の量からドクターストップも懸念されますが、試合は続行。
そして、再開となった直後でした。右のジャブを打ってきた粕谷選手に、宮川選手が右のオーバーハンドを顎に叩き込みます。
迎え撃つ形のカウンターで入った粕谷選手は両腕をだらりと下げ、なんと立ったまま失神。
立ったままフラついてるところに、宮川選手が追撃を加え、すぐにレフェリーストップとなりました。
完全に失神KOとなる時、人は脚がピンと伸びますが、この試合では突っ込んできた粕谷選手のエネルギーを、宮川選手のパンチが見事に相殺させたタイミングで、失神した状態で倒れずにいたのでした。
試合後、しばらく動かない粕谷選手。いかにこの一発の衝撃が大きかったかわかります。
その後意識を戻すも、両脇を抱えられケージを去りました。
粕谷選手はこの一発で顎を砕かれ、プレートとボルトで固定することになりました。
内田晶vs璃明武
続いての試合は、2019年に行われた内田晶(しょう)vs璃明武(りあむ)のキックボクシング(Krush)での対戦です。
この試合は、芸術的な大技と衝撃的な失神シーンが見られた試合でした。
Krushでの初勝利を目指す内田選手と、5連勝を狙う璃明武選手。
試合が始まると両者ローキック、前蹴りで遠い距離で様子を見ます。
しかし、互いに距離をつめ打ち合った瞬間、璃明武選手が右のショートフックをカウンターで決めダウンを奪います。
すぐに立ち上がり、ファイティングポーズを取る内田選手、試合が再開されると果敢に打ち合いに応じます。
再び璃明武選手のパンチを被弾しぐらつきますが、打ち返し、強気に前に出ます。
そして、ブレイクとなった後、衝撃の瞬間が訪れました。
しばらく見合う二人ですが、璃明武選手が上段後ろ回し蹴りを放つと、内田選手の顔面を捉えました。
勢いよく飛んできた璃明武選手の踵が、見事に内田選手の顎を跳ね上げてました。
上段後ろ回し蹴りは当たれば威力はあるものの、あまりヒットしづらい大技です。しかし、この試合では見事にクリーンヒット。
インパクトの瞬間の顔の揺れが、いかにこの衝撃が強かったかを物語っています。
この光景にレフェリーは内田選手が倒れる前に試合を終わらせました。
そのまま後ろから倒れた内田選手ですが、脚がピンと硬直し、細かく痙攣しています。
その後、心配そうに内田選手の元に駆け寄る璃明武選手でしたが、内田選手は意識は戻りません。結局、璃明武選手がリングを去った後も、内田選手はまだ動けずにいるようでした。
内田選手の安否が心配されましたが、同日、内田選手はツイッターで
「ご心配おかけしました。全然ビンビンなんで大丈夫です。あんな派手なKOされていうことじゃないけど俺まだまだやれます。是非注目しててください。ありがとうございました」
と、無事であることを報告しました。
マイク・タイソンvsマービス・フレージャー
マイク・タイソン。ボクシングに詳しくない人でも、その名を聞いたことがある人は多いでしょう。
80年代後半、破格のスピードとパワーで無敵を誇っていた伝説のボクサーです。
今回は、数多くあるタイソンの衝撃KOシーンの中でも、最も衝撃的かつ、最も早く終わった試合を紹介します。
対戦相手はマービス・フレージャー。あのモハメド・アリに勝ったこともある伝説的なボクサー、ジョー・フレージャーの息子です。
一方、タイソンはまだチャンピオンになっていない頃ですが、20歳ながら24勝22KO無敗の驚異の戦績を誇り、多くの試合を1Rで終わらせていました。
この風格と背中の厚み。知らない人にいくつに見えるか聞いて、20歳と答えられる人はいるでしょうか。
試合が始まるとその瞬間はすぐに訪れます。
タイソンが距離を詰め、ヘビー級とは思えないスピードのパンチを放っていきます。ジャブを打ちながらすぐにマービスをロープに詰めます。
サイドに逃げたマービスですが、今度はコーナーに追い詰められます。
するとタイソンが恐ろしいスピードのアッパーをかすらせます。
このアッパーが効いたマービンは追撃のアッパーを被弾。
この時点で失神します。
しかし獰猛な野獣は攻撃を止めません。マービンが崩れ落ちる間に右アッパーと左フックを追加。
マービンは座り込んだまま失神。
反応のないマービンを見てレフェリーは、10カウント数えることなく試合を終わらせました。
試合開始からわずか30秒での出来事です。
この試合はタイソンの生涯最速の試合となりました。
アン・ウルフvsヴォンダ・ウォード
続いては、アン・ウルフvsヴォンダ・ウォード。女子ボクシングの試合です。
この試合は、”女子ボクシング史上最大のノックアウト”と言われるほど、衝撃的な失神KOとなりました。
女子といえどライトヘビー級。ウォードは元バスケットの選手で女子世界王者の過去最高身長の198センチもあります。
これまで18戦全勝15KOと驚異のハードパンチャーです。
一方、アンは身長175センチ、元々ジュニアミドル級から階級を上げてきた選手で、ヘビー級から下りてきたウォードとはかなりの体格差があります。
そしてウォードは無敗の王者。戦前の予想はウォード有利が圧倒的でした。
試合が始まると、身長差を生かしてジャブで距離を取るウォード。アンとしては懐に飛び込み、インファイトからパンチを当てたいところです。
中々、いいパンチを当てられないアンですが、試合は一瞬にして終わりました。
ウォードの右に、アンのオーバーハンドがカウンターでヒット。
前に出てきたウォードに対して、迎え撃つ形でアンの体重が乗ったパンチがクリーンヒットしました。
その直後、ウォードの巨体は崩れ落ちました。
無意識のまま立ち上がろうとするウォードですが、その顔はずっと白目をむいています。
あまりの衝撃映像だったのでしょう。カメラはウォードを画角から外していました。
この時、ウォードは倒れた時の衝撃で首と頭を損傷し病院に運ばれましたが、無事に回復。
7ヶ月後に試合に出場、その後再び王者へ返り咲きます。
そして2010年に引退しますが、アンとの一戦の負けがウォードにとって唯一の黒星となったのでした。
なお、この勝利により一躍有名になったアン選手ですが、その衝撃的なKOに中々次の対戦相手が決まらなかったそうです。
トビー・イマダvsホルヘ・マスヴィダル
続いては、2009年に行われた総合格闘技での試合、トビー・イマダとホルヘ・マスヴィダルの対戦です。
この試合はなんとも奇妙な光景の失神フィニッシュとなりました。
Bellatorライト級トーナメントの準決勝で、柔術をバックボーンとしているトビーは準々決勝を1Rチョークスリーパーで、マスヴィダルは1RパウンドでのTKOと、両者1Rフィニッシュで勝ち上がってきました。
試合が始まると、トビーは得意な寝技に持っていきたいですが、打撃が得意なマスヴィダルが的確にパンチを決め優位に進めます。
次第にトビーの右目は青く腫れ上がっていきます。
しかし3R、グラウンドに持ち込んだトビーは上からマスヴィダルを抑え込もうとします。
トビーの片脚を掴んで持ち上げるマスヴィダル。
トビーが逆さになりながらマスヴィダルの後ろから抱きついているという、奇妙な体勢になります。
しかし、この時すでにマスヴィダルはトビーの術中にはまっていました。
マスヴィダルの腕と首を脚でロックするトビー。裏三角絞めです。
普通の三角絞めや横三角絞めは見ることはありますが、裏三角絞めは滅多に見られません。しかも、スタンドでの状態です。
しばらく立ったまま耐えるマスヴィダルですが、突如脱力。グニャリと身体を仰け反らせ失神しました。
目を開いたまま失神するマスヴィダル。重力がプラスされた状態での三角絞め、かなりの締め上げだったのでしょう。
顔が青白くなっているのがわかります。
珍しい体勢、珍しい技で決まった失神フィニッシュでした。
ヴィンセント・ペトウェイvsサイモン・ブラウン
続いてはヴィンセント・ペトウェイvsサイモン・ブラウンの試合です。
1995年、ボクシングIBF世界スーパーウェルター級タイトルをかけたこの戦いは、失神後の選手の様子が衝撃的な試合でした。
圧倒的不利と言われていたテリー・ノリスに初めてのテンカウントを聞かせ、大金星の2階級制覇を達成したのち、王座陥落し再び栄冠を目指すサイモンと、初の防衛戦のペトウェイの対戦です。
試合が始まると、距離をつめてくるサイモンに対し、ペトウェイは軽快なフットワークとジャブでアウトボクシングを展開します。
しかし1R終盤、ペトウェイが左フックをカウンターでもらいぐらつくと、サイモンが追撃しダウン。
すぐに立ち上がりますが脚に来ています。(5分20秒)
1R、残り時間あと僅か。ペトウェイはクリンチでしのぎます。
2R、回復したペトウェイが再びアウトボクシングをし、3R今度はペトウェイがダウンを奪います。
ジャブの打ち終わりに合わせた見事なストレートです。(13:13)
そして5Rには、サイモンがローブローをし、座り込んだペトウェイに対して追撃をします。
しかしレフェリーはダウンと判断。これにはペトウェイも怒りを露わにします。(21:08)
6Rにはサイモンがバッティングで試合は一時中断。(25:28)荒れた試合になってきます。
しかしその30秒後、ペトウェイが怒りの鉄槌を下します。(25:28)
前に出てきたサイモンにペトウェイが打ち合いで応じます。
ペトウェイ渾身の左がサイモンの顎に炸裂。
サイモンは脚を硬直させ失神、後ろに倒れ込みます。
サイモンはなんと失神しながらファイティングポーズを取り、パンチを打っています。
意識を失ってもなお戦い続けているのでしょうか。凄まじいファイティングスピリッツです。
しかし、サイモンは立ち上がることなく、そのままKOとなりました。
この試合は、反則され追い込まれたペトウェイが見せた見事な一撃と、失神しながらも戦おうとするサイモンの姿が衝撃的でした。
ロイ・ジョーンズvsアート・セーワノ
続いては1992年に行われたこの試合です。ロイ・ジョーンズvsアート・セーワノ。
この試合もまた、失神後の選手の様子が衝撃的な試合でした。
後に歴代の名チャンピオンになるジョーンズは、この時まだチャンピオンではありませんでしたが、16勝16KO無敗で圧倒的な強さを見せていました。
そして、この試合でその記録を17勝17KOに伸ばすことになります。
試合が始まると、グローブタッチを求めるジョーンズを無視してパンチを打ち込んでくるセーワノ。(2:14)
ガンガン前に出てくるセーワノですが、ジョーンズが落ち着いていなし、細かいパンチを入れていきます。
そして1分半が過ぎた時、ジョーンズが一瞬の隙きをついて右をセーワノのテンプルに打ち込み、ドンッという鈍い音とともに、セーワノが切り落とした大木のように倒れ込みます。
カメラがセーワノの顔を映すと、そこには白目を剥いて口を開け、壮絶な表情で失神している顔が映っていました。
ショッキングな映像だったためか、カメラはすぐにジョーンズの方にスイッチングします。
衝撃的な失神にレフェリーはすぐに試合を止めました。
叩きつけるようなパンチでテンプルをとらえたジョーンズは、わずか90秒で試合を終わらせたのでした。
実質、一発で終わらせたジョーンズのクリーンヒットと、セーワノの壮絶な表情の失神に衝撃を受けた試合でした。
ガーボンタ・デービスvsレオ・サンタ・クルス
”小さいタイソン”そう呼ばれている現役のボクサーがいます。
階級の中では小柄ながら、踏み込みの速さ、抜群のハンドスピード、桁違いのパワー、素行の悪さ、見た目などタイソンそっくりです。
彼の名はガーボンタ・デービス。そんな、デービスが見せた衝撃失神KOをご紹介します。
対戦相手はレオ・サンタ・クルス。対戦時点で、4階級制覇のスーパーフェザー級王者です。
今回の試合は、デービスが持っているライト級と、サンタ・クルスが持っているスーパーフェザー級の階級の違う2つの世界王座が同時に懸けられた極めて異例の試合です。
これに勝てばサンタ・クルスにとっては、スーパーフェザー級防衛とライト級栄冠で5階級制覇の偉業達成。
デービスにとっては、ライト級防衛とスーパーフェザー級奪還になります。
デービスはこの時点で、スーパーフェザー級、ライト級の2階級制覇王者。23戦23勝22KOと驚異の戦績、KO率を誇っており、メイウェザーが才能に惚れ込んだ愛弟子でもあります。
試合が始まると、両者ジャブを打ち合います。カウンターを狙うデービスは要所要所で良いパンチを当てますが、サンタ・クルスはプレッシャーをかけ続けます。
4Rから徐々に打ち合うようになったデービス。
そして6R、突如としてその瞬間が訪れます。
しびれを切らしたかのように、多少の被弾を気にせず前に出るデービス(4:49)。
パワーパンチを打ち込むも前に出てくるサンタ・クルス。(5:14)
そして、不用意に右を3連発で放つと、デービスがその3発目を左にスウェーし、高速の左アッパーを決めます。(5:28)
その瞬間、サンタ・クルスは両腕をだらりと下げ失神。コーナーに崩れ落ちると、すぐに試合終了となりました。
インパクトの瞬間、サンタ・クルスの顔がねじれているのがわかります。デービスの渾身のアッパーが顎にクリーンヒットしたので、相当な衝撃だったでしょう。
そして、この仰け反らせるような体勢から、強力かつ高速のアッパーを打てるデービスはかなりのバネの持ち主でしょう。
一撃KOシーンはフックやストレートが多いですが、このシーンはアッパーの名手デービスが見せたアッパーでの一撃KOでした。
この失神で、サンタ・クルスはコーナーからしばらく動けませんでした。
おわりに
最後までご視聴いただき誠にありがとうございます。
格闘技における衝撃失神KOはかなり多く、今回も選出にはかなり悩みました。
ぜひ、コメント欄にて皆さんの好きな”衝撃的な失神KOシーン”を教えていただけたら嬉しいです。
今後も格闘技に関する動画を投稿していくので、ぜひチャンネル登録よろしくおねがいします。
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