【解説】井上尚弥のカウンターを分析・考察してみた【井上尚弥スキル特集シリーズ】

【解説】井上尚弥のカウンターを分析・考察してみた【井上尚弥スキル特集シリーズ】

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井上尚弥選手のキャリアの中で数々のダウンシーンを生んだカウンター。

今回はそんな井上選手のカウンターをカウンターの名手と比較しながら、分析・考察していきたいと思います。

また、井上選手のボディブローの解説動画も投稿しておりますので、これを見終えましたら是非そちらもご覧いただければ嬉しいです。
今後も井上尚弥選手のスキル特集動画を投稿する予定ですので、是非チャンネル登録よろしくおねがいします。

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この動画でわかること
  • 得意なカウンター
  • なぜヒットするのか
  • パンチのかわし方
  • カウンターの名手
目次

井上尚弥スキル特集カウンター編

左フックのカウンター

井上選手が最も得意とするカウンターは左フックのカウンターではないでしょうか。

チュワタナやナルバエス、河野公平、リカルド・ロドリゲス、ボワイヨ、エマニュエル・ロドリゲス、モロニーと、実に多くの相手から左フックのカウンターでダウンを奪っています。

左フックのカウンターについて

左フックのカウンターはボクシングにおいてベーシックなカウンターです。オーソドックスの構えの場合、前手である左腕は相手と近い距離にあり、前進してきた相手には隙きを見せずに効率よく当てられるカウンターでしょう。

左フックのカウンターの名手

左フックのカウンターの名手はノニト・ドネアです。

左フックはドネアの代名詞です。ドネアもまた左フックのカウンターで数多くのダウンシーンを生みました。
井上選手と対戦した際も、そのパンチで井上選手の右まぶたをカットさせました。

ドネアの左フックのカウンターは、蜘蛛のように待ち構えて、前進してきた相手の一瞬の隙きをついて、半身を傾けて体重を乗せて打つパンチで、一撃必殺の威力を持っています。

身体を右前に傾けながら相手のパンチをかわし、後ろに下がりながら当てることが多いです。

井上尚弥の左フックのカウンター

https://youtube.com/shorts/WGsUuDQXr8g?feature=share

井上選手の左フックのカウンターは主に、ドネアのように相手の前進に対してスウェーやバックステップしながら合わせるパターンと打ち合いの中などで当てるパターンがあります。

ドネアと同じ、前進してきた相手に当てる左フックのカウンターでも、ドネアは身体をかがめるように右側に傾けながら放ちますが、井上選手は身体を反らせるように左側に避けながら放つことが多いです。

チュワタナ、ナルバエス、リカルド・ロドリゲス、モロニーから奪ったダウンが前者で、リカルド・ロドリゲス、ボワイヨ、エマニュエル・ロドリゲスから奪ったダウンが後者です。

井上選手はよく、相手のパンチが当たる距離に顔を置いています。しかし、相手のパンチは当たらず井上選手のパンチが当たるのです。

井上選手は、素早いバックステップやスウェーの他にも、身体を相手の外側に移動したり、相手のパンチが当たる瞬間に顔を背けるスリッピングアウェイという技術で、相手のパンチが当たりながらも衝撃を流してカウンターを打っています。

こうやって、相手の射程圏内にいながらもギリギリでパンチを交わし、あるいは当たったとしてもノーダメージで自分のパンチを当てているのです。

もちろん、これは井上選手の距離感の良さ、反射神経、パンチの読み、勘の良さが為せる技で、並の選手なら被弾してしまうでしょう。

リカルド・ロドリゲス戦

リカルド・ロドリゲス戦を例に見ていきましょう。

この試合は、2つの全ダウンをリカルド・ロドリゲスから左フックのカウンターで奪った試合です。井上選手の左フックのカウンターがよく見られた試合で、1Rで相手を見きった後、2R中盤から積極的に放っていました。

リカルド・ロドリゲスのボディジャブに対して、右半身をひねりかわしつつ左フック(2R1:30)。ジャブにすらカウンターを合わせていくのが井上選手のすごいところです。

そして3R、前進し距離を詰めててきたリカルド・ロドリゲスに左フックを合わせぐらつかせます。(3R0:28)2Rと同じく右半身を外側に少しひねっての左フックでした。リカルド・ロドリゲスは「井上は至近距離に弱点がある」とし序盤からパンチを放ちながら前に踏み込み、幾度となく距離を詰めてきました。

それらを、バックステップやボディワークで全てかわしていた井上選手。2Rで距離感とタイミングを見切ったのでしょう。

そして、ラッシュでの左のダブルがカウンターで入りダウンを奪います。(3R0:32)

リカルド・ロドリゲスが立ち上がってきますが、(3R1:00)再び左フックのカウンターで試合を決めました。
2回目のダウンは、井上選手得意のスウェーしながらスリッピングアウェイでのカウンターでした。

ジェイソン・モロニー戦

この、顔を相手のパンチの進行方向に捻ってかわすというスリッピングアウェイの技術を使って打つカウンターは、モロニー戦で奪ったダウンでも見せました。(6R0:25)

モロニーはダブルジャブを打ちながら前進してくる癖があります。その特徴に合わせて、時計回りに半身を捻って左フックを合わせました。

モロニーのジャブに対してわずかにバックステップ、そしてスリッピングアウェイで顔を後ろに捻って受けています。
パンチは当たっていますが、当たることは計算の上でしょう。スリッピングアウェイでノーダメージです。
バックステップで距離を調整した上でのスリッピングアウェイ。当たってはいますがノーダメージ。
井上選手の距離感に改めて脱帽です。
相手のパンチをギリギリいなすことで、こちらのパンチを当てるのにベストな距離で、威力のあるカウンターを決めることができます。
さらにモロニーは井上選手のフックが見えておらず、顎にヒットしたので効いてしまいました。

エマニュエル・ロドリゲス戦

エマニュエル・ロドリゲス戦でも多くの左フックのカウンターが見られました。

最初のダウンを左フックのカウンターで奪った井上選手ですが、その前から頻繁に左フックのカウンターを合わせにいっていました。

ロドリゲスのワンツーのジャブをギリギリで(1R0:43)かわし左フックを放ちます。
その後も、ヒットこそしないものの多く放っています。特にロドリゲスの左アッパーへのカウンターは1回目のダウンシーンでも見られました。

1回目のダウンシーンでは、インファイトから前脚を外側に開き距離を取り、前に押し込むようなフォームの左フックを合わせました。

前脚を移動することで距離を取って、ロドリゲスのアッパーが当たらない位置に移動していることがわかります。
そして、遠くなった分前に押し込むようなストレートに近い左フックで見事にヒットさせています。

この細かい動作を瞬間的に行っています。

押し込むようなモーションのフックは、1Rで中々ヒットしないことをふまえて、2Rで修正してきたのかもしれませんね。

ジャブに対するカウンター

井上選手のカウンターで驚くべきところは、ジャブに対しても頻繁にカウンターを放っているところです。ジャブに対するカウンターは、キャリア序盤よりも後期になるにつれ多く見られます。

通常、ジャブは一番隙のないのパンチですが、井上選手は異常な反射神経、ハンドスピード、パンチの読み、見切り、距離感でカウンターを合わせます。

ダスマリナス戦では、ヒットこそしなかったものの、1Rからダスマリナスのジャブに左フックのカウンターを放ち、ダスマリナスは攻め手を失いました。

エマニュエル・ロドリゲス戦

先程紹介したエマニュエル・ロドリゲスのジャブに対するカウンターも、ヒットこそしていないものの一瞬の間に井上選手のテクニックが隠されていました。(1R0:43)

ロドリゲスのジャブを異常な反射神経でギリギリの距離でかわしている井上選手ですが、実はパリングで相手のパンチの軌道をずらしています。
パリングとは相手のパンチに自分の腕で当てて、軌道をずらすテクニックです。

井上選手は、このパリングで相手のジャブの軌道をずらし、最小限のスウェーでかわすことに成功しているのです。パリングと同時に僅かにスウェーをし、パリングした腕が戻る前に左フックを放っています。

この間、わずか1秒もありません。この短い間にそれだけの動作をしているのです。

さらに、ロドリゲスがジャブを打つ直前に、井上選手が右腕をテンプルの横に置く動作をしているのがわかるでしょうか?
これは、相手のパンチを誘う動作でロマチェンコも得意とするテクニックです。

つまりロドリゲスは無意識下の中でジャブをさせられていたことになります。カウンターの名手は相手のパンチを誘うのが上手いと言われています。
井上選手の驚異的なジャブへのカウンターは、異常な反射神経もそうですが、こういった誘いや相手の前動作の読みがあるからこそ実現しているのでしょう。

ジェイソン・モロニー戦

モロニー戦では左フックで奪ったダウン以外にもジャブへのカウンターを多く放っています。

相手がジャブを打ってきた瞬間に顔を下に向け、おでこで相手のパンチを滑らせると、すぐに右クロスを放っています(1R1:25)

この相手の左ジャブに対する右クロスのカウンターはとてもよく見られます。ジャブは最も隙きのないパンチで、最も多く放たれるパンチですが、井上選手はいとも簡単にカウンターを合わせてくるので、相手はジャブですら打つことを躊躇してしまいます。

そして二度目のダウンシーンです。少し膝を曲げ、顔面をマロニーに近づけ相手のジャブを誘います。
モロニーのジャブをわずかに左へスリップし、ギリギリでかすりながらかわし、コンパクトな右を振り抜き試合を終わらせました。

誘いや右のキレもすごいですが、モロニーのジャブをギリギリでかすらせながらカウンターを放っているところは人間業とは思えません。
井上選手は相手のパンチをギリギリでかわすことが上手い選手ですが、カウンターの場面ではノーダメージの範囲で相手のパンチに触れているという、数センチレベルのパンチの見切りを見せています。

プルカウンター

最後はプルカウンターです。

プルカウンターは相手のパンチをスウェーなどでかわし、打ち終わりに合わせるカウンターです。

井上選手はそこまで多くプルカウンターを披露していませんが時々放っています。

プルカウンターについて

プルカウンターは相手のパンチを誘い、左右ではなく前後の距離でギリギリでかわし、瞬時にパンチを放つので反射神経、パンチの見切り、距離感、瞬発力が求められます。

これらがない選手は被弾が増えるだけなので難しいでしょう。

プルカウンターの名手

プルカウンターの名手はメイウェザーです。プルカウンターはメイウェザーの代名詞とも言われるほど得意としています。

相手の前に顔面を差し出し、相手がパンチを打ってきた瞬間にスウェーでかわし、右ストレートを合わせます。
前脚に重心を置いたまま上半身の動きだけでかわすことで、相手との距離が近い状態でパンチを放ち、体重が乗ったパンチを当てることができます。

類まれなる反射神経もそうですが、相手の前動作の読みでパンチをかわしていると思います。
メイウェザーはよく、相手がパンチを打っていない状態でピクッと状態を反らせる動きをします。これは、相手のパンチそのものよりも前動作に反応していると思われます。

そしてカウンターを放った後は、パンチアンドロールで追撃をかわします。これで仮にカウンターを外しても被弾するリスクを減らしているのです。

他にもジェームズ・トニーやロイ・ジョーンズなど反射神経やセンスのある選手が得意としているカウンターです。

井上尚弥のプルカウンター

井上選手のプルカウンターは特にキャリア中盤によく見られました。

メイウェザーは真後ろ、あるいはやや左に顔を傾けてスウェーしますが、井上選手は右に顔を傾けて、スリップ気味のスウェーでプルカウンターを放ちます。

この動きは実際にミット打ちでも練習しているパターンです。

プルカウンター エルナンデス(4R0:35)(4R2:15)

河野公平戦

河野戦では3Rにスリップ気味のプルカウンターを決めた井上選手ですが、実はこの前にもプルカウンターを狙っているシーンがあります。

一瞬避ける動作をした後に右ストレートを放っています。この動作はモロニー戦でも見られた動きで、おそらく相手の動きからジャブの前動作と読み取り、プルカウンターのような動きのストレートになっているのではないでしょうか。

そして、実際に決めた場面です。河野選手のジャブを右後ろにスリップして右ストレートを合わせます。
これまでのカウンターと同様、相手のパンチを被弾しますがノーダメージのギリギリの距離感で受けています。

いずれの場面も、カウンターの前に井上選手が両手で高い位置をガードしているのがわかります。河野選手は、井上選手がガードを固めるとパンチを打ち込んでくる癖があります。(2R1:01)(2R2:01)
この動作もカウンターのための誘いかもしれません。

スローで見ると、河野選手のジャブの前動作からすでにカウンターの体勢に入っていることがわかります。
やはり、誘いプラス前動作で相手のパンチを見切り、タイミングを合わせているのでしょう。

そして打ち終わりはメイウェザーのようにパンチアンドロールではなく、バックステップで安全圏に移動して相手の反撃を回避しています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

他にも、ショートフックやアッパーなど接近戦でのカウンターなど、色々なカウンターシーンがあると思います。
ぜひ皆さんのお気に入りカウンターシーンがありましたらコメント欄にて教えて下さい。

カウンター以外にもボディブローなど井上選手のスキル特集動画を投稿しており、今後も投稿する予定ですので是非チャンネル登録してお待ち下さい。

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